春には菜の花のパスタ、初夏にはキラキラ美しい水まんじゅう… 季節を楽しむ豊かな時間を描いたコミック&レシピ集【書評】
公開日:2025/7/8

春になったら菜の花でパスタを作り、初夏には涼しげな水まんじゅうを友人への手土産に。りんごやいちじくなどの秋の味覚を楽しみ、冬になるとホットワインで体を温める。
オールカラーで綴られるコミック&レシピ集『季節が好きなわたしとマダム』(にいざか にいこ/KADOKAWA)には、そんな春夏秋冬の営みがていねいに描き込まれ、日々の生活を豊かにするヒントがたくさん詰まっていた。
出会いと別れの季節でもある春先に、夫と小学生の息子と新たな住まいにやってきた主人公のキコ。彼女が新生活にすっかり馴染む息子に羨ましい気持ちを抱いていると、彼が家に新しい友だちを連れてくる。
同年代の小学校の友だちかと思いきや、現れたのは登下校の旗振り当番で子どもたちを見守っていた淑やかなマダム・節子さんだった。それぞれの家でいちごのミルクプリンや旬の野菜を巻いた蒸し春巻きを振る舞いあい、すっかり意気投合したキコと節子さんは、食だけでなく器や服など、四季折々の楽しみを見つけては持ち寄って、お互いの生活を豊かに彩っていく。
そんな2人と息子を含めた愛おしい3人の日常は全編が淡い色彩で描かれており、四季とともに移り変わる季節の色合いを色とりどりのイラストで楽しむことができる。特に夏の章で登場した赤紫蘇色の赤パジャマは色鮮やかで、とびきり印象に残った。
さらに漫画の章末には、薬味たっぷりのおにぎりやりんごの紅茶煮など、彼女たちの食卓に並ぶ季節を取り入れたレシピが掲載されている。できあがった料理の写真も載っているので、実際に彼女たちの味を再現してみるのもよさそうだ。
四季の境目があいまいになっている現代の日本。それでも、彼女たちのように生活に季節を取り入れながら、日々を彩っていくことは愛おしくて、ときに心をフッと軽やかにしてくれる。キコと節子さんの暮らしを眺めていると、あらためてそう思えた。