「子どもが親の面倒を見るのが一番いい」「介護は家族の誰かがするもの」という考えを壊していきたい。毒親を介護するということ【著者インタビュー】
公開日:2025/7/23

※この記事はセンシティブな内容を含みます。ご了承の上、お読みください。
小さい頃から自分を罵倒し暴力を振るってきた父が、がんで余命1年と宣告された。一人娘・ヒトミはなるべく父と関わらずにいられるように介護サービスを検討、実行に移す。しかし父は他者の介入を拒絶。頼れる親族もいないヒトミに全ての負担がのしかかる。相変わらず心無い言葉を浴びせる父。育児と仕事にも影響が出るほどの物理的負担。やがてヒトミには“介護うつ”の症状が出始めて……。
毒親、介護、ふたつの要素が絡み合う『余命300日の毒親』(枇杷かな子:著、太田差惠子:監修・解説/KADOKAWA)。自身も親の介護中に描いたという著者の枇杷かな子さん。ご自身も“介護うつ”になったという枇杷さんの介護の経験、多忙な中でも本作を通して伝えたかったことを聞きました。
――本作の場合、ヒトミとお父さんの間に夫が入ってくれるようになります。介護を女性の役割、家族で解決する問題と考えている人もいまだにいるようですが、枇杷さんは実際に介護をされてどんなことを感じましたか?
枇杷かな子さん(以下、枇杷):『毒親介護』を執筆されている石川先生に取材をさせていただいた時に伺ったのですが、介護って以前よりは男女関係なく身近な問題と言われるようになったけれども、それでもやっぱり女性の比率がかなり高いらしいんです。その性別という括りは早くなくしていきたい、「ぶっ壊していきましょうよ」と思っています。
――いまだにある男女の格差をなくしていきたいと。
枇杷:というかそもそも介護の問題って「家族の問題だから家族の誰かが負担するもの」と当たり前に思っている人がたくさんいらっしゃって。私自身、介護している時も「若いのに偉いね、でもそれが一番の親孝行だから」と言われたことがあるんです。本人からしたら悪気がない言葉だと思うのですが、当時の病んでいた私にとってはかなり辛い言葉で。男女よりももっと手前の「子どもが親の介護をするのが一番いい」という考え方自体をひっくり返したいです。
――夫も多忙、妻も疲弊し介護によって夫婦関係が悪化していく描写もある本作ですが、このエピソードはどのようにして考えられましたか?
枇杷:うちの夫も私の親に呼ばれることは多々あって。午前休を取ったりして対応してもらうことがありました。それでかなり疲れてしまったんですよね。お互い疲れると会話もなくなってくる。すると「靴下を適当なところに置いている」とかいつもだったら許せることが許せなくなってくるんですよ。そのあたりは体験を参考に考えましたね。
文・取材=原智香