介護は「親がいなくなったからはい、終わり」ではない。介護中には気づかなかった不調がどっと押し寄せることも【著者インタビュー】
公開日:2025/7/29

※この記事はセンシティブな内容を含みます。ご了承の上、お読みください。
小さい頃から自分を罵倒し暴力を振るってきた父が、がんで余命1年と宣告された。一人娘・ヒトミはなるべく父と関わらずにいられるように介護サービスを検討、実行に移す。しかし父は他者の介入を拒絶。頼れる親族もいないヒトミに全ての負担がのしかかる。相変わらず心無い言葉を浴びせる父。育児と仕事にも影響が出るほどの物理的負担。やがてヒトミには“介護うつ”の症状が出始めて……。
毒親、介護、ふたつの要素が絡み合う『余命300日の毒親』(枇杷かな子:著、太田差惠子:監修・解説/KADOKAWA)。自身も親の介護中に描いたという著者の枇杷かな子さん。ご自身も“介護うつ”になったという枇杷さんの介護の経験、多忙な中でも本作を通して伝えたかったことを聞きました。
――介護をしていた当時の自分を振り返って「こうすればよかったな」と思うことはありますか?
枇杷かな子(以下、枇杷):もうちょっと早くメンタルクリニックの先生に自分の状態を話せばよかったです。もともと精神科に通っていて薬をずっと飲んでいたのですが、担当医師に対して介護のことは特に話さずいつもと同じ薬をもらいたいと希望をだしていました。だけどだんだん眠れなくなってしまって。身体は疲れているけど「明日また父から電話がきたらどうしよう」と思ったら眠れないんです。それでいざ病院に行き医師に介護関係の現状や自分の状態を話しているうちに号泣してしまって。あの時の自分になんと声をかけても耳に入らなかったとは思うのですが、言えるなら「早く今の苦しさを先生に話したほうがいいよ」と言いたいですね。
――メンタルクリニックって、一度も行ったことがない人に対しハードルが高いと感じても「迷わずに行ったほうがいい」というお話はよく聞くと思うのですが、何度か行ったことがある枇杷さんでも症状が悪くなっているのを自覚するのが難しかったんですね。
枇杷:そうなんです。今思えば髪の毛が抜けたりそれまでと違う症状があったのですが、一番は睡眠ですね。眠れなくなったら、なにかしら対処したほうがいいと思います。もちろん病院に行くのが全員にとって絶対いい方法だとは一概には言えないですが「風邪を引いたら病院に行く」と同じくらいのイメージで、まずは行ってみてほしいです。
――なるほど。悩んだらまずは、ということですね。
枇杷:それに介護が終わった後も精神的な不安定は続くというのも伝えたくて。介護って「親がいなくなったから、はい終わり」で楽になるものではなくて、そのあと介護の時の辛さがフラッシュバックするんですよ。介護中はアドレナリンじゃないですけど、やらなきゃいけないことでいっぱいで不調に気づきづらくて。それが介護が終わった後にどっと出てくるんです。特に親が亡くなった場合はそれだけでもしんどいですし。そこも知った上で、自分の体を守ってほしいですね。
文・取材=原智香