性教育は「生殖について説明する」だけではない! アイデンティティを固める教育だった【著者対談】

マンガ

公開日:2025/7/19

『こどもせいきょういくはじめます』本文より
『こどもせいきょういくはじめます』本文より

 大人の学び直しができる“児童書”が話題です。“子どもが自分で読める性教育の本がほしい!”というたくさんの声から生まれた『こどもせいきょういくはじめます おうち性教育はじめますシリーズ』(フクチマミ、村瀬幸浩、北山ひと美/KADOKAWA)の著者・フクチマミさんと、“いのち”を脅かす日常のピンチを切り抜けるための知識をまとめた『いのちをまもる図鑑 最強のピンチ脱出マニュアル』(滝乃 みわこ:著、池上 彰・今泉 忠明・国崎 信江・ 西 竜一 :監修/ダイヤモンド社)の著者・滝乃みわこさん。ふたりに共通するのは“ふつうの大人”であること。専門家からの目線ではなく、“ふつうの大人”の素朴な目線から専門家に取材し、自身も学び直しながら、児童書を書き上げたといいます。

 制作中、お互いの著書にたくさんのヒントと勇気をもらっていたというふたり。今回は滝乃さんがフクチさんにインタビューする形で、累計35万部超の人気シリーズ最新作『こどもせいきょういくはじめます』について語っていただきました。“大人の学びなおし”にもなる視点が詰まっています。

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滝乃みわこさん(左)と、フクチマミさん(右)。
滝乃みわこさん(左)と、フクチマミさん(右)。

滝乃みわこさん(以下、滝乃):「おうち性教育はじめます」シリーズ、3作目の『こどもせいきょういくはじめます』は初めての児童書ですね。私をはじめ大人が読むと、まずいろんな家族が登場するところに“時代”を感じるはず。うちは子どもはいませんが、それでも近頃は本当にいろんな家族のかたちを見聞きします。

フクチマミさん(以下、フクチ):あるシングルマザーの人からも「まず、主人公の家族設定にひかれました」という感想をいただきました。「シングル家庭はちょっと特殊だと思ってたから、うれしかったです」って。

滝乃:主人公は男女の双子で、シングルマザーとおじいちゃんという家族にした理由は?

フクチ:モデルにさせてもらった子がいるんです。「うちのママは“あなたたちは卵から生まれたのよ”って言うんだよ」というエピソードがおもしろくて、冒頭に描きました。その子が双子で、ママはシングルで、祖父母と暮らしているご家庭だったんです。

『こどもせいきょういくはじめます』本文より
『こどもせいきょういくはじめます』本文より

滝乃:この双子たちの両親が、離婚後にどうしているかがわかる感じもリアルです。

フクチ:そうそう。「わたしたちのパパは別の家族になったんだよね」と言うシーンも、実話です。

 子どもはこんな風にケロッと言うんですよね。単なる事実だし、家族にいろんなかたちがあるのがあたりまえのことだから。実はこの家族設定自体が、性教育のうちのひとつなんです。

滝乃:読後に聞くと、すごく納得しますね。性教育って、単に生殖について説明する教育ではないんですね。

フクチ:そうなんです。家族のかたちから、自分はどういう存在なのかという“アイデンティティ”の部分を固める教育で。だからこそ、「これが正しい、これが間違っている」と言い切れないことが多いんです。

 本書はシリーズ初の児童書で、主人公も想定読者も子どもたち。どう表現すればいいのか、もうめっちゃくちゃに悩んだのですが、滝乃さんの『いのちをまもる図鑑』にはいつもヒントをいただきました。「これが正しい、これが間違っている」を、できるだけ明確に表現していますよね。

滝乃:私もめっちゃくちゃに悩みました(笑)。子どもは特に、結論がぼやけるとモヤモヤするだろうなと思って。

フクチ:だから言い切れないことも、ふんわりと“着地”させることを意識しました。覚悟を決めて、あえて言い切る判断をした部分もあります。

取材・文=瀬戸珠恵

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