同意・不同意を学ぶゲーム「ふれあいサイコロゲーム」とは? 実際の学校で取り入れられている性教育【著者対談】
公開日:2025/7/20

大人の学び直しができる“児童書”が話題です。“子どもが自分で読める性教育の本がほしい!”というたくさんの声から生まれた『こどもせいきょういくはじめます おうち性教育はじめますシリーズ』(フクチマミ、村瀬幸浩、北山ひと美/KADOKAWA)の著者・フクチマミさんと、“いのち”を脅かす日常のピンチを切り抜けるための知識をまとめた『いのちをまもる図鑑 最強のピンチ脱出マニュアル』(滝乃 みわこ:著、池上 彰・今泉 忠明・国崎 信江・ 西 竜一 :監修/ダイヤモンド社)の著者・滝乃みわこさん。ふたりに共通するのは“ふつうの大人”であること。専門家からの目線ではなく、“ふつうの大人”の素朴な目線から専門家に取材し、自身も学び直しながら、児童書を書き上げたといいます。
制作中、お互いの著書にたくさんのヒントと勇気をもらっていたというふたり。今回は滝乃さんがフクチさんにインタビューする形で、累計35万部超の人気シリーズ最新作『こどもせいきょういくはじめます』について語っていただきました。“大人の学びなおし”にもなる視点が詰まっています。

滝乃みわこさん(以下、滝乃):本書は1章〈1・2年生〉、2章〈2年生〉…と、子どもの成長に合わせ、授業カリキュラムのような構成をされていますよね。この授業の様子が、とにかくおもしろい! 夢中で読みました。
フクチマミさん(以下、フクチ):これは私立和光鶴川小学校(東京都町田市)と私立和光小学校(東京都世田谷区)で、17年ほど実践されている性教育カリキュラムがベースになっています。そのカリキュラムを作成されているのが、共著の北山ひと美先生(和光小学校・和光幼稚園前校園長)です。
滝乃:特に「私もやってみたい!」と思ったのが「ふれあいサイコロゲーム」の授業です。実際、教室での子どもたちの反応はどうでしたか?

フクチ:「ふれあいサイコロゲーム」は5年生の授業で。もう異性を意識している年齢だから、隣の席の男女でやるときは「ムリーーー!」の大合唱でした(笑)。
実は、この授業を見学する前に、私と担当編集さんも「ふれあいサイコロゲーム」を体験したんです。実際にやってみると、関係性ができていない人とふれあうとなると、言いようのない抵抗感が生まれるんですよ。「頭をなでていいですか」と聞かれても、「イヤです」となかなか伝えられない。「えっと…今はちょっと…」が精いっぱい。
滝乃:そうか。想像してみたら、そもそも抵抗感が常にまったくなくふれあえる人って、私は夫ぐらいしかいないかも。
フクチ:わかります。ただ子どもの場合は、友達同士で心のおもむくままにふれあうことが楽しかったり安心したりする部分があります。だから「ふれあいサイコロゲーム」の授業の後でも、子どもたちが「抱きついていい?」と相手に同意を取り始めることはほとんどなくて。表面上では変わっていないように見えても、この授業中に“ふれあうこと”や“同意を取ること”、“イヤと伝えること”がどういうことなのか、肌で強く感じ取っています。
滝乃:その肌で感じ取ったことが、いざというときに効いてくるのでしょうね。あと、このゲームのルールにある「断られても、不機嫌にならない」は、実生活の中でもすごく大切。
フクチ:そうなんです。やっぱり「断られる」イコール「自分への否定」と誤って受け取ってしまいがちだから。これは、私たち大人こそ、練習が必要だと思いました。
滝乃:このゲーム、大人バージョンをたとえば会社の研修などでやるといいかも! 「ハラスメントって何なのか」とか「イヤと伝える練習」は、今の大人たちこそ必要ですよね。たとえばブラックな仕事を押しつけられそうになったときにも、「イヤ」が伝えられるかどうかで変わってきますしね。
取材・文=瀬戸珠恵