「大人につきあいたいと言われたら?」子どもを守るために、正解をスパッと言い切ることの大切さ【著者対談】

暮らし

公開日:2025/7/26

『いのちをまもる図鑑』本文より イラスト:室木おすし
『いのちをまもる図鑑』本文より イラスト:室木おすし

 児童書を子どもに読ませようと与えて、全く興味を示してもらえなかった経験がありませんか? どれだけ良い児童書でも、それを子どもに「与えて」「読ませよう」とすると読んでくれないことも。一方で、子ども自らが夢中で次のページをめくり始める児童書があります。いったい何が違うのでしょうか? ――そこには、著者が悩みに悩んでひねり出した“しかけ”がありました。

“いのち”を脅かす日常のピンチを切り抜けるための知識をまとめた児童書『いのちをまもる図鑑 最強のピンチ脱出マニュアル』(滝乃みわこ:著、池上 彰・今泉忠明・国崎信江・ 西竜一:監修/ダイヤモンド社)著者・滝乃みわこさんと、“子どもが自分で読める性教育の本がほしい!”というたくさんの声から生まれた『こどもせいきょういくはじめます おうち性教育はじめますシリーズ』(フクチマミ、村瀬幸浩、北山ひと美/KADOKAWA)の著者・フクチマミさんとの対談が実現!

advertisement

 制作中、お互いの著書にたくさんのヒントと勇気をもらっていたというふたり。フクチさんが滝乃さんにインタビューする形で、2025年上半期のベストセラーとなった児童書『いのちをまもる図鑑』の“しかけ”について語っていただきました。

滝乃みわこさん
滝乃みわこさん

フクチマミさん(以下、フクチ):「大人につきあいたいと言われたら、親に言いつける」というページがあり、その言葉にもハッとしました。いろんなケースが想定されるところですが、「親に言いつける」という“正解”をスパッと表現しています。なるほど、これは犯罪につながるかもしれないから、あえて言い切らなければいけないこともあるんだと気づかされました。

滝乃みわこさん(以下、滝乃):これは、クイズ形式の構成にしたからこそできた表現だと思います。ゲーム要素とかクイズ要素をちりばめることで、“正解”という形でスパッと言い切れる。担当編集さんからは「言い切ってしまって、大丈夫でしょうか」と何度も確認されました。でも最終的に子どもの立場になって考えると、結論をぼやかされると、モヤモヤする。なんとなくモヤモヤしながら読み進めても、あまり印象には残らないのではないかと思うんです。

フクチ:本文の中でも「子どもを口説こうとする大人は、あなたじゃなくても、弱ければ誰でもいい」と言い切っていますね。

滝乃:そうではないケースもあるかもしれない。でも、やっぱり知識も判断力も弱い子どもに対して大人が交際を迫るのは、非対等な関係です。「つきあってるんだからいいよね」と子どもをだまして裸の動画を闇サイトで売る大人や、SNSで知り合った大人に妊娠させられる、さらにひどいときには殺されるケースもあるので、結果的に子どもが被害にあうぐらいだったら、「それは残念な大人です」って書こう、と考えました。

フクチ:『いのちをまもる図鑑』だから、いのちを守るか、守れずに死ぬか。死ぬぐらいだったら!と。このタイトルでこの切り口だからこそ、スパッと言い切れて、子どもの腑に落ちるんですね。

滝乃:社会には、誰かが「これはこうだ!」と言い切ったら、それが絶対的な答えになってしまう風潮があります。でも子どもたちには、スパッとした答えの後に、ワンステップ進んでもらえたらいいなと思って。目次に「命を守る方法は、たくさんの方法のうちの1つです」という注釈が入っています。

取材・文=瀬戸珠恵

あわせて読みたい