BOOK OF THE YEAR 2025投票受付中! 昨年のコミック部門を振り返る——勢いある新顔が続々登場!
公開日:2025/9/7

『ダ・ヴィンチ』の年末恒例大特集「BOOK OF THE YEAR」。2025年の投票は現在受付中! 各ジャンルの「今年、いちばん良かった本」をぜひ投票してみてほしい。ここで改めて、2024年の「コミック」部門にどんな本がランクインしたのか振り返ってみることにしよう。
<去年のランキング>
1位『呪術廻戦』芥見下々
2位『ようこそ!FACT(東京S区第二支部)へ』魚豊
3位『君と宇宙を歩くために』泥ノ田犬彦
4位『ありす、宇宙までも』売野機子
5位『Shrink~精神科医ヨワイ~』七海 仁:原作、月子:漫画
6位『きのう何食べた?』よしながふみ
7位『SPY×FAMILY』遠藤達哉
8位『ファミレス行こ。』(上) 和山やま
9位『葬送のフリーレン』山田鐘人:原作、アベツカサ:作画
10位『環と周』よしながふみ
11位『路傍のフジイ』鍋倉夫
12位『二月の勝者-絶対合格の教室-』高瀬志帆
13位『名探偵コナン』青山剛昌
14位『ONE PIECE』尾田栄一郎
15位『【推しの子】』赤坂アカ×横槍メンゴ
16位『メダリスト』つるまいかだ
17位『魔王と勇者の戦いの裏で』涼樹悠樹:原作、葦尾乱平:漫画、山椒魚:キャラクター原案
18位『誰も知らんがな』サライネス
19位『僕のヒーローアカデミア』堀越耕平
20位『だんドーン』秦 三子
21位『文豪ストレイドッグス』朝霧カフカ:原作、春河35:漫画
22位『カグラバチ』外薗 健
23位『ドッグスレッド』野田サトル
24位『あくたの死に際』竹屋まり子
25位『ダイヤモンドの功罪』平井大橋
26位『恋した人は、妹の代わりに死んでくれと言った。―妹と結婚した片思い相手がなぜ今さら私のもとに?と思ったら―@COMIC』家守まき:著、長野水貴:原作、とよた瑣織:キャラクター原案
27位『ひとりでしにたい』カレー沢 薫:著、ドネリー美咲:原案協力
28位『降り積もれ孤独な死よ』井龍 一:原作、伊藤翔太:漫画
29位『薬の魔物の解雇理由@COMIC』真丸イノ:漫画、桜瀬彩香:原作
30位『平和の国の島崎へ』濱田轟天:原作、瀬下 猛:漫画
30位『しょせん他人事ですから ~とある弁護士の本音の仕事~』佐藤真通:原作、富士屋カツヒト:作画、清水陽平:監修
超大作が終わりを迎え、勢いある新顔が登場。
「ふつう」を問うような意欲作も急増!
連載終了が近づくに連れて、SNSではそれを惜しむ声や物語の行く末を考察する意見が飛び交った。前回の1位に輝いた『呪術廻戦』は、そうやって大勢のマンガ好きを揺さぶり続けてきた作品だ。「呪い」を武器に闘うスタイル、容赦なく死んでいく人気キャラ、あまりにも無慈悲すぎる敵陣営……と、既存の少年マンガ観を根底から覆すような設定や展開に、誰もが夢中にさせられた。なかでも五条悟人気は凄まじく、彼と出会えたことを感謝するような声も多く上がっている。
2位の『ようこそ!FACT(東京S区第二支部)へ』もまた、なかなかマンガでは取り上げられないようなテーマに挑んだ作品だ。本作で描いたのは「陰謀論」。世界の真実を見つけ出そうとする主人公像はどこか遠い世界の人物のようで、その実、身近なものである。ともすれば暗い読後感になりそうなところを、爽やかに仕上げたのは流石の一言。いとも簡単に傾いていく人間の心模様を描かせたら、魚豊さんの右に出る者はいないかも。

3位の『君と宇宙を歩くために』は、まさに令和だからこそ出てきたような作品だ。周囲と足並みを揃えるのが難しい特性を持つ少年が、ヤンキーのクラスメイトとともに少しずつ成長していくさまは、読み手の心を静かに打つ。「〝みんなと違う〟〝なぜ自分はこんなことができないんだ〟といったことは、大小の違いはあれど、きっと誰もが心にいくつか持っているもの」(49歳・男)というように、自分ごととして置き換えながら読んだ人も少なくないのだろう。
ちなみに、本作以外でも前回は、「ふつうとはなにか」を問うような作品が多かった。4位『ありす、宇宙までも』ではセミリンガルが描かれ、5位『Shrink~精神科医ヨワイ~』の主人公は精神科医として、弱ってしまった現代人をやさしく見つめる。11位『路傍のフジイ』、27位『ひとりでしにたい』は、「一般的ではない」とされてきた人たちの生き方に迫り、読み手の視野をぐんと広げることに貢献しているだろう。「多様性」という言葉がどこか薄っぺらく使われてしまうことも増えてきたいま、これらの作品からは、社会の隅に追いやられがちな人々を本気で掬い上げようという気概が感じられる。
一昨年ランクインしなかった新顔としては、22位『カグラバチ』、25位『ダイヤモンドの功罪』に注目したい。どちらも巻数はまだ一桁ながらもマンガ賞の1位を獲得しており、これから勢いを増していく予感に満ちている。
惜しまれつつもラストを迎える作品もあれば、幕を開けたばかりでさまざまな可能性を秘めた作品もある。今回のランキングから、『呪術廻戦』に続くような人気大作は生まれるのか。これからのマンガ界が楽しみで仕方ない。
文=イガラシダイ
※この記事は『ダ・ヴィンチ』2025年1月号の転載です。
