東野圭吾、初の子ども向け絵本『少年とクスノキ』刊行。小説内に登場した架空の絵本が、実物になった理由とは?
公開日:2025/7/24

日本を代表する作家・東野圭吾氏が、2025年に作家生活40周年を迎えた。その記念すべき年に初の子供向け絵本『少年とクスノキ』を刊行した。なぜ、作家である東野氏によって絵本のストーリーは執筆されたのか。担当編集者が聞いた。
累計120万部を突破した「クスノキ」シリーズの第2弾『クスノキの女神』の作中に登場する絵本が『少年とクスノキ』だ。小説の中では架空の物語なので、一部しか書かれていないが、それだけでも充分に心を打つものがあり、なくてはならない要素になっている。
なぜ物語を小説に組み込んだのか東野氏に聞くと、「主人公の伯母の病気がきっかけでした。現代の医学では救えない病気だから主人公にどう受け止めさせるかを考えた。なんとか救う方法はないかと考えましたが、そんな都合のいい話はない……。葛藤の中から見つけ出した答えが、絵本のストーリーに乗せて伝える方法でした」。詳しくは書けないが、『クスノキの女神』の読者ならその方法は見事に成功しているとわかるはずだ。
架空の絵本のままにしておくにはあまりにも惜しく、『クスノキの女神』の読者から「この絵本が欲しい」と、多くのコメントが寄せられたこともあり、実物の絵本にするために加筆を依頼したところ「子ども達に、読書の喜びや楽しみを知るきっかけとなる作品を届けたい」という思いを持つ東野氏の快諾を得ることができた。
そこで重要となるのが、物語のイメージを表現するイラストだ。担当するのは、絵本作家としてだけではなく、画家として国内外で活躍する吉田瑠美氏。絵を見た東野氏は、「クスノキの女神の登場人物に、絵が上手な少年がいます。彼は、ある有名な物語が好きなのですが、その世界観と描いていただいた絵に通じるものがあって、すごく気に入りました」と語っていた。色彩豊かに描かれた作品は、実際に少年が描くならこんな画風だろうと、想像に難くない仕上がりになっている。
日本を代表する作家が執筆したストーリーと、それを的確に捉えて描かれた画が彩る絵本は、老若男女問わず多くの人に感動をもたらしてくれるだろう。
最後に「ふと思いついた物語に素敵な絵をつけていただきました。主人公はあなたかもしれません。楽しんでいただけたなら幸いです」と東野氏からメッセージをもらった。
