キューライス作品のすべてが詰まった「キューライス万博」が、松屋銀座で開催中「17歳の時に作ったものをまさか銀座で展示していただけるとは」【内覧会レポート】
公開日:2025/7/31
かわいいだけじゃない! シュールでナンセンスな世界が、キューライス作品の真髄
そして、この作品展で、一番写真を撮るべきは、「シュール館」と題されたエリアに鎮座する、どでかいナポリタン。これは、キューライスさんが会社員時代、原稿料や印税が入るわけでもないのに、仕事後にひとりで何千枚もイラストを描いて、音も入れて完成させたアニメーション「ナポリタンの夜」(2014年)に登場するナポリタンの立体造形物だ。本作品展ではそのアニメーションももちろん見ることができるから必見だ。「ナポリタンの夜」は、イタリア料理でも日本料理でもない、レゾンデートル(存在理由)を失ったナポリタンという化け物が夜な夜な人を喰らっていくホラー作品。「美味しそうに見えるように」とこだわって作られたナポリタンの造形物では、実際にナポリタンに食べられている風の写真を撮ることができる。ほら、キューライスさんによるお手本がこちら。この作品展を訪れた記念に、是非とも挑戦してみてほしい。




「えー! キューライスさんってこんな怖い作品も作っていたの!?」――キューライスさんの漫画や絵本に登場するかわいいキャラクターしか知らなかったファンは「ナポリタンの夜」を始めとする「シュール館」の作品には少々驚かされるかもしれない。だが、「ナポリタンの夜」に色濃く見られるようなシュールさ、暗さこそが、幼い頃からダリやマグリットなどの作品が好きで、吉田戦車氏の漫画に影響を受けたというキューライスさんの作品の真髄に違いない。