キューライス作品のすべてが詰まった「キューライス万博」が、松屋銀座で開催中「17歳の時に作ったものをまさか銀座で展示していただけるとは」【内覧会レポート】

文芸・カルチャー

公開日:2025/7/31

自分のネガティブな部分を笑いに変換

 元々、キューライスさんは、絵本作家や漫画家として活躍するより前、高校生の頃から長年アニメーション制作を続けてきた。17歳の時には、歯をモチーフにした「歯男」という人形のコマ撮り撮影からアニメーションを作成。実際のアニメーションや、撮影に使用した人形は、この作品展でも展示されており、キューライスさんは「17歳の時に作ったものをまさか銀座で展示させていただけることになるとは」と感慨深げに語る。その後、アニメーションを作ることを志して、東京造形大学アニメーション専攻に進み、同大学院を修了後、東北新社でCMディレクターとして勤務。「仕事の絵コンテが書けるなら漫画も書けるだろう」と、ブログやSNSで漫画を公開したところ、『ネコノヒー』の単行本化が決定して、独立。――そうして、漫画家・絵本作家となるに至ったキューライスさんの原点は、やはりシュールでナンセンスな世界にこそあるに違いないと、展示を見て思う。では、作品のテイストが変わっても、ずっと変わらない、キューライスさんの創作の根幹にあるものは何か。キューライスさんにお話を伺うと、こんな答えが返ってきた。

「それはネガティブさだと思います。自分は基本的にものすごく暗いことを考えてしまう人間なので、そういう暗い部分が特に『ナポリタンの夜』には活かされているんじゃないかと。今の僕の漫画や絵本は、外側としてはかわいく作っているけれど、その中に内包しているのは、悲しみとか、普段自分に降りかかってくるような、ちょっとした不幸なんです。そんな自分のネガティブな部分を、笑いに変換して、漫画や絵本にエッセンスとして今も盛り込んでいるのかなぁと思います」

物販は大人買い必至…コラボカフェからも目が離せない!

 この作品展は、物販コーナーも見もの。本が大好きなダ・ヴィンチWeb読者なら思わず買い揃えたくなるであろう全18種類のクリアしおりのほか、作品展限定のグッズが数多く取り揃えられている。キューライスさんのオススメは、今回の作品展のために作られたネガティブ思考の公式キャラクター「マチュー」や、元気でちょっぴりおバカなキャラクター「スキネズミ」、そして、「絶滅寸前の動物パッチンハモス」のぬいぐるみ。どれもかわいらしく、大人買いしたくなってしまうのは、きっと私だけではないだろう。その上、作品展が行われている松屋銀座8階の「MGカフェ」では、本作品展開催期間中『キューライス万博』をモチーフにしたオリジナルメニューが楽しめるコラボカフェも開催中。作品展を見た後は、コラボカフェで仲間とキューライスさんの作品談義に花を咲かせるのも良さそうだ。

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 この作品展では、キューライスさんの創作の歴史、その舞台裏まで丸裸。実際、「キューライスの1日」という映像展示では、365日変わらないという規則正しい生活と自分のために作るお弁当、はたまた入浴シーンまで公開されている。そんな、キューライスさんのすべてが詰まったこの作品展を訪れれば、さらにキューライス作品の虜になるはず。さぁあなたもこの夏は、みんなで一緒に「キューライス万博『Q‑rais EXPO』」に行こう!

【開催概要】
●作品展「キューライス万博『Q‑rais EXPO』」

東京会場
●会場:松屋銀座 8階イベントスクエア
●会期:2025年7月23日(水)~2025年8月11日(月・祝)

金沢会場
●会場:香林坊大和 8階ホール
●会期:2025年11月27日(木)~2025年12月16日(火)

https://www.qrais-expo.com/outline

取材・文=アサトーミナミ 撮影=島本絵梨佳

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