切っただけ茹でただけでも立派な料理! それなのに「手抜き」に感じてしまう理由【著者インタビュー】
公開日:2025/8/12

「疲れてごはんを作る元気がない」「ごはんも作れない私って……」――もし、そんなことに悩んだら、読んでほしいのが『心曇る日は ご自愛ごはんを』(うめやまちはる/KADOKAWA)。料理を通して自分らしさと向き合い、じっくり少しずつ自分を取り戻していく食卓コミックエッセイだ。
30代、憧れの仕事に就いて充実しながらも忙しい毎日を過ごしていた主人公は、小さなミスをきっかけに体調を崩して仕事を辞めることに。結婚して専業主婦になったものの、働きたくても働けないでいる自分に自信がもてない日々を送っていた。そんな日々を変えるきっかけになったのは、毎日の普通のごはん。読むと、ほっこり癒やされる。ちょっとしたものでいいから、自分のためにごはんを作ってみたくなる。そんな温かなこの本は一体どうやって生まれたのか。著者のうめやまちはるさんにお話を伺った。
――本書では、病気が原因で働けずにいるうめやまさんが、「ごはん」を作ることで前を向いていく姿が描かれています。作品を描く上でこだわったのはどういうところですか。
うめやまちはるさん(以下、うめやま):お話の内容はどう受け止められるのかわからなく自信がなかったので、せめて絵だけは丁寧に描こうと心がけていました。特に料理はおいしそうに見えるようにと思って描いていました。
――どの料理もとてもおいしそうで思わずヨダレが出てしまいます。そんな料理を毎日作るのはとても大変なこと。何より大変なのは何を作るか考えることではないかと思います。2話では、主人公が夕飯の献立に悩んでいるとき、旦那さんから「てきとうでいいよ」と言われてさらに悩んでしまうというエピソードが描かれていて、思わず共感してしまいました。
うめやま:昔は「てきとうでいいよ」と言われると、それでもそれなりのことを求められているような気がして、なんとか頑張らなくちゃと思っていたんです。でも、最近は「夫は本当にてきとうでいいと思っているんだな」とわかってきたので、本当にてきとうにしています。切っただけ、茹でただけの野菜とか、レトルトも出します。
――切っただけ、茹でただけでも立派な料理ですよね。ですが、せっかく自分が作った料理を「何だか手抜きばかり」と感じてしまう人も少なくないように感じます。そんな人にかけてあげられる言葉はありますか。
うめやま:「手間暇をかける=愛情がこもっている」というような思い込みがある気がしています。料理には、かかるものとかからないものがありますから、サッとできるものを作るとなぜか食べる人に対しての思いまで手抜きしたような気分になってしまうのかも……。そういう思い込みがあった場合、考え方を変えるのは簡単なことではないように思います。でも、時間も体力も有限!「作っただけ偉い!今日のごはんをおいしく食べよう~!」でいいと思います。
取材・文=アサトーミナミ