専業主婦になって「夫のために料理を頑張らなきゃ」と思うようになった。自分の素直な気持ちを認めることの大切さ【著者インタビュー】
公開日:2025/8/17

「疲れてごはんを作る元気がない」「ごはんも作れない私って……」――もし、そんなことに悩んだら、読んでほしいのが『心曇る日は ご自愛ごはんを』(うめやまちはる/KADOKAWA)。料理を通して自分らしさと向き合い、じっくり少しずつ自分を取り戻していく食卓コミックエッセイだ。
30代、憧れの仕事に就いて充実しながらも忙しい毎日を過ごしていた主人公は、小さなミスをきっかけに体調を崩して仕事を辞めることに。結婚して専業主婦になったものの、働きたくても働けないでいる自分に自信がもてない日々を送っていた。そんな日々を変えるきっかけになったのは、毎日の普通のごはん。読むと、ほっこり癒やされる。ちょっとしたものでいいから、自分のためにごはんを作ってみたくなる。そんな温かなこの本は一体どうやって生まれたのか。著者のうめやまちはるさんにお話を伺った。
――うめやまさんにとって「料理」とはどういうものでしょうか。
うめやまちはるさん(以下、うめやま):専業主婦なので、料理は自分の仕事だと思っています。病気があり、なかなかお金を稼ぐ仕事ができないのですが、「料理をする」という家族の中での役割があって、家族に喜んでもらえることで自尊心も保てているように思います。
――「料理を作る」ということは本当に価値があることですよね。ですが、「料理は自分の仕事」との言葉はありつつも、この作品で描かれているのは、家族のための料理ばかりではありません。8話で描かれている「私の料理で私にも喜んでほしい」という台詞が心に深く沁みました。
うめやま:専業主婦になって、夫のために料理を頑張らなきゃいけないという意識が強くありました。夫が喜ぶように、「夫が満足するものを」「夫優先に」と考えていたら、何だか料理するのが楽しくなくなってしまって……。
――料理が楽しくなくなってしまうほど追い詰められていたんですね。
うめやま:もちろん、人のために何かをするのは幸せなことだと思うんですが、心のどこかで自分が我慢をしている気持ちにも気づいてしまいました。心から人のために動くことが好きな人もいるけれど、自分はそこまで良い人間ではない。でもそこで、そんな自分を否定するのではなく、素直な気持ちも認めていけた方が、結果的に人に優しくできるような気がしていて、それが「私の料理で私にも喜んでほしい」という台詞につながりました。
取材・文=アサトーミナミ