栗を剥くのに没頭するうち、気づいたら嫌なことを忘れていた。「ご自愛ごはん」作りがくれる穏やかな時間【著者インタビュー】
公開日:2025/8/20

「疲れてごはんを作る元気がない」「ごはんも作れない私って……」――もし、そんなことに悩んだら、読んでほしいのが『心曇る日は ご自愛ごはんを』(うめやまちはる/KADOKAWA)。料理を通して自分らしさと向き合い、じっくり少しずつ自分を取り戻していく食卓コミックエッセイだ。
30代、憧れの仕事に就いて充実しながらも忙しい毎日を過ごしていた主人公は、小さなミスをきっかけに体調を崩して仕事を辞めることに。結婚して専業主婦になったものの、働きたくても働けないでいる自分に自信がもてない日々を送っていた。そんな日々を変えるきっかけになったのは、毎日の普通のごはん。読むと、ほっこり癒やされる。ちょっとしたものでいいから、自分のためにごはんを作ってみたくなる。そんな温かなこの本は一体どうやって生まれたのか。著者のうめやまちはるさんにお話を伺った。
――本書に描かれたエピソードの中で、特にイチオシのものはどれでしょうか。
うめやまちはるさん(以下、うめやま):12話の「すべてを忘れて栗を剥く」が好きです。モヤモヤする出来事があっても、栗を剥いているうちにそのことを忘れてしまうというお話です。時間がたくさんあると、つい嫌なことを考えてしまいがちですが、料理をする時間は料理に集中できるので穏やかに過ごすことができますし、料理の結果おいしいものも食べられるので幸せだなぁと思います。
――作中の台詞がこの本を温かなものにするいいスパイスになっていると感じました。台詞はどのように生み出しているのでしょうか。
うめやま:まずザーッと書き出したあとに整理してなるべく簡潔になるように心がけました。悩む箇所はいくつも単語を書き出して、どうしたらより伝わる言い回しになるかを考えました。
――特に好きな台詞は何ですか。
うめやま:「料理っていいな 手を動かしているうちに嫌なことも忘れちゃう 病気があることは変えられないし それは苦しいことだけど それでも こうして作って食べて元気になるような 自分も大事な人も喜ぶ時間を作れたらそれだけで しあわせ」という12話の最後の台詞が好きです。この1冊を通して表現したかったことがギュッと詰まっている気がします。
取材・文=アサトーミナミ