夜勤明けのランチ酒が今日を救う。バツイチアラサー女子の人生再構築を支えるご飯とお酒【書評】

マンガ

公開日:2025/8/23

 美味しいものやお酒が好きならば『ランチ酒』(原田ひ香:原作(祥伝社)、高田サンコ:作画/KADOKAWA)を手に取ってみてほしい。昼間に味わうお酒とごはんを通して、自分と向き合い、人生を再構築していく女性の姿を描いた物語だ。美味しそうな料理の描写に思わずお腹が鳴ってしまうだけでなく、静かに背中を押してくれるような力強さも感じさせる。

 様々な事情を抱える客からの依頼が舞い込む「中野お助け本舗」で働く、アラサーでバツイチの犬森祥子。彼女は「見守り屋」として、午後10時から朝5時まで依頼人の頼みを受けてペットや子どもなどを静かに見守り続けるという一風変わった仕事をしている。そんな祥子にとって、見守り仕事が終わる午前中こそが至福の時間。自分へのご褒美として、ランチとお酒をゆっくりと味わう「ランチ酒」が、彼女のささやかな楽しみであり、癒しでもある。

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 彼女の見守る相手は日ごとに変わり、依頼内容に応じて状況も千差万別だ。そこに依頼人たちの人生や事情が垣間見える。その日の出来事や依頼内容、彼女の気分に合わせて、仕事を終えた後に選ばれる料理やお酒も少しずつ異なるため、今日は何を食べて、どんな酒を飲むのかと期待が高まるのだ。

 物語が進むにつれ、祥子の過去も少しずつ明かされていく。なぜ結婚し、なぜ離婚したのか。そして、いまは別れて暮らしている娘・明里への思い。元夫との再会、幼なじみとの距離など、日常の延長にあるドラマが丁寧に描かれ、読者の心に自然と入り込んでくる。

 過去の傷を抱えながらも、祥子は自由に、自分らしく時間を過ごす。目の前の人と向き合い、食事とお酒を存分に楽しむその姿はとても軽やかで眩しい。3巻では元夫が再婚し、離れて暮らす娘との関係にも変化が起こる。悲しさを抱えながらも一歩を踏み出す洋子と、美味しそうなごはんとお酒の数々から、今後も目が離せない。

文=ネゴト / fumi

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