子どもだけでいる時に大地震が来たら? 親子で震災時の行動や約束を確認できる、シミュレーション型学習絵本【書評】

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PR 公開日:2025/8/28

親子で学ぶ「そのとき」どうする? おおじしんから いのちをまもるえほん
親子で学ぶ「そのとき」どうする? おおじしんから いのちをまもるえほん(清永奈穂:監修・文、石塚ワカメ:絵/KADOKAWA)

 多くの人の話題に上ったのではないかと思われる「7月5日に大災害が訪れる」という説。我が家の小1小3兄弟も学校から仕入れてきたようで、しっかり怯えていた。根拠のない噂を信じるのはいかがなものか?と思いつつも、せっかくだからここで防災について教えておきたい!と思った時に紹介されたのが『親子で学ぶ「そのとき」どうする? おおじしんから いのちをまもるえほん』(清永奈穂:監修・文、石塚ワカメ:絵/KADOKAWA)だ。

 本書は「もしも子どもだけでいるときに、大揺れが来たら?」というテーマで自分の命を守るためにはどんな行動を取ったらいいか、子どもにもわかりやすく説明。地震発生から屋内・屋外避難、避難所生活まであらゆるシチュエーションを解説している。

 登場するのは小学4年生のおねえちゃんと、1年生のおとうと。ふたりきりでお留守番中、おねえちゃんは二段ベッドの下、おとうとはトイレにいるときに大きな揺れが発生する。おとうとのところにかけよってくれたおねえちゃん。テレビもつかず、どうしようかと思っているときにさらに大きな揺れが……! ここで本書はどんなに大きく長い揺れでもいつかは必ず止まることを伝え「だいたい5ふん、ゆれがとまるまであんぜんなところでからだをまもるんだ!」と具体的に指示。

 そのために揺れ始めたら8秒以内にうさぎさんのポーズで安全な場所を探し、いもむしさん、コアラさんなどのポーズで具体的に隠れるべき場所も紹介している。

 と、かなり情報量がぎっしりだが、わかりやすく可愛らしいイラストと具体性の高い文章で我が家の子どもたちにもしっかり伝わった様子。息子ふたりとも「ここでいもむしさん!」「ここでコアラさん!」と早速部屋の隠れるのによい場所を探して実践してくれた。

 外へ避難することを決意した絵本の姉弟たち。ここではその際どんな準備をするべきかを説明する。外ではどんなことが起きているかを想定し、安全に逃げるためにはどんなことに気を付けるべきか……。「ブレーカーをおとして」など正直大人でも忘れてしまいそうなことから「マンションから逃げるときはエレベーターを使わない」など、大人にとっては常識でも、確かに子どもには改めて伝えておいたほうがいいかも……という視点までてんこ盛り。こういうことはいざ自分で伝えようとしても教え忘れがち。このように情報を網羅してくれるのはかなりありがたいと感じた。

 もうひとつ本書の素晴らしいと感じた点はイラスト。実は私は東日本大震災発生後に東北のTV局で働いていたため、津波の映像も含めて当時の映像はかなり見たほうだと思う。その視点から見ても本書のイラストはかなりしっかりとした描写。かといって生々しすぎず、恐怖をあおるようなものではない。擬音語や人々のリアクションなどを通じてしっかり緊迫感を伝えてくれるため、子どもたちもちゃんと怖がり、真剣に耳を傾けていた。

 私が本書で一番気づかせてもらったと思ったのは、いざという時の避難場所を決めていなかったこと。我が家では子どもたちだけで留守番するのは私が近くのスーパーなどに行くときくらいだから、まだふたりきりの時に地震が発生する事態は想定していなかった。しかしもし大きな揺れが起きたら、パニックになって外に出ないとも限らない。子どもたちは学校での避難訓練などの経験からか思ったよりも地震・避難についての知識を持っていて、本書を読みながらも「学校ではね~」と教えてくれた。言えばわかるのに、いつまでも自分の子どもが小さいつもりでいたなあと反省。ふたりきりの時に地震が起きたらどうするか、外に逃げるかどうかはどう判断するか、逃げるときはどこに逃げるか……改めて親子で話し合うことができた。

 本書を読みながら、いざという時どんな行動を取ったらいいか? ぜひ家族みんなで確認してみてほしい。

文=原智香

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