四国お遍路は、裏の顔を持つ「あの世に近いこの世の道」…。実際にお遍路を歩いて聞いた怖い話、体験した不可思議な話をまとめたコミックエッセイ【書評】

マンガ

公開日:2025/9/13

【怖い場面あり、苦手な人は閲覧注意!】

 四国お遍路とは、弘法大師・空海にゆかりある四国八十八ヶ所霊場を巡ることである。願いを叶えたい、自分を見つめ直したいなど、巡礼者の目的はさまざまだ。しかし、ご利益をいただけるという良い話ばかりではない。思わずゾッとしてしまう奇妙なエピソードがあるのだとか……。

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怪談奇談まみれの四国お遍路』(竹書房)は、著者のしまたけひと氏がさまざまな怪談、奇談を集めながら、四国お遍路を巡ったことを描いたコミックエッセイである。著者は10年前に四国お遍路を歩き、「漫画家寿命が延びた」と信じていた。しかし再び漫画家人生に危機を感じ、編集部の提案により怪談、奇談を集めながら再び四国お遍路を巡ることになったのだ。約1400キロに及ぶ「あの世に近いこの世の道」。そこで多くの心霊、怪奇話に出会うことになる。

 四国お遍路には、途中で命を落としたお遍路さん、電話ボックスの怪異など、数々の心霊エピソードが存在する。ご利益倍増につられて巡ることになった著者も、ここまでの恐怖を味わうとは思わなかっただろう。実際に奇妙な出来事に遭遇してお遍路巡りを中断する人も数多くいるそうだ。ホラーが苦手な人ならば、そもそも行きたいとすら思わないかもしれない。

 しかし、著者が途中で中断することなく巡り続けられたのは、話をしてくれたお遍路さんや宿のスタッフの存在が大きいだろう。本作は、道中に出会った人とのやり取りも見どころの一つである。「怪談話を集めるのはやめておけ」といいつつも、話してくれるお遍路さん、宿の部屋に集まり怖い話をする宿のご主人など。怪談話をしているのに、どこか親しみやすい雰囲気で、井戸端会議を眺めているような感覚になるだろう。ほっこりしつつも背筋がゾッとする感覚を味わえるのが本作の魅力である。

 観光案内では決して語られることのない四国お遍路の裏話。訪れたら、あなたも不思議な体験をするかもしれない。

文=ネゴト/ ながた

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