きっかけは超人気ミュージシャン! 22年前に刊行された書籍が「2025年上半期 新書売上ランキング」上位に

文芸・カルチャー

公開日:2025/8/27

教養主義の没落 変わりゆくエリート学生文化
教養主義の没落 変わりゆくエリート学生文化(竹内洋/中央公論新社)

 2003年に刊行された書籍『教養主義の没落 変わりゆくエリート学生文化』(竹内洋/中央公論新社)が今、SNS上で大きな話題を集めている。その背景には、テレビ番組での紹介やシンガーソングライター・米津玄師の言及があるという。

教養主義の没落』は、京都大学および関西大学の名誉教授で社会学者の竹内洋氏が著した一冊。1970年前後までキャンパスの規範文化だったとされる「教養主義」の輝かしい実態と、それが衰退していく過程を、歴史的背景やデータを交えて論じている。

 同書のテーマとなる「教養主義」とは、その名の通り教養を重視する生き方や考え方のこと。単なる知識の蓄積にとどまらず、人格形成や社会的役割への関与を見据えた知的成長を重視する側面もある。日本においては、大学進学率がまだ低かった昭和初期から戦後にかけて広く浸透したが、やがて進学率の上昇や大学教育の大衆化といった社会構造の変化により、その影響力は次第に薄れていった。

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 そんな日本における「教養主義」について論じた『教養主義の没落』が刊行されてからおよそ22年。今、なぜ再び注目を集めているのか――。

 そのきっかけは、2025年2月に公開された音楽メディアでのインタビューにおいて、米津が同書を「べらぼうに面白かった」と紹介していたことにある。反響の大きさについて、出版元の中央公論新社は編集部のX(旧Twitter)を通じ、インタビュー公開直後に17刷、18刷の重版が決定したと報告していた。

 もともと読書家として知られる米津が絶賛したことを契機に、再び注目を集めることとなった『教養主義の没落』。読者からは、「大正教養主義と戦後の大衆教養主義の流れ、興味深かった」「後半から急加速していく面白さに電撃を喰らう」「骨太な内容で、熟読せずにはいられない一冊」といった感想が寄せられている。

 なお7月31日に放送されたテレビ番組『あの本、読みました?』(BSテレ東)によれば、「2025年上半期<新書>売り上げランキングBEST10」(ジュンク堂書店 池袋本店/集計期間:2025/1/1~6/15)において、同書は第9位にランクイン。また番組では、著者の竹内氏をゲストに迎え、書籍の内容や米津による影響力について改めて掘り下げていた。

 竹内氏によると、これまで自身の著書に関するネット上のレビューには目を通してこなかったという。しかし今回の再ブームを受け、初めて読者の反応を確認したとのこと。その中には、米津の影響で購入したと語る読者の感想に加え、「自分は読んでもさっぱりわからなかった」と前置きしつつ、「難しい本を読む米津さんはやっぱりすごい」といった声も見られたと振り返っている。

 確かに『教養主義の没落』は、誰にとっても平易とは言いがたい書籍かもしれない。番組内でもMCの鈴木保奈美が「欲を言えば3回ぐらいちゃんとメモを取りながら読みたい」と語っていたように、その内容は極めて濃密であることがうかがえる。

 米津がなぜこの本に魅了されたのか。その理由が気になる人は、この機会に手に取ってみてほしい。

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