SUPER BEAVER渋谷龍太のエッセイ連載「吹けば飛ぶよな男だが」/第50回「俺の言うことをきけ」

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公開日:2025/8/27

 はてさて、生きていく上で重要なものの一つとして、助言というものがある。その多くは自分よりも年齢を重ね、多くのことを経験した身近な人から直接、または過去に何か偉業を成した人間から、書記や映像、音声などから間接的に貰うものである。直接的なチュートリアルでなくたって、「俺はこうしたぜ」、「私はこう思っているの」的な言葉たちは大きな人生の指針になり得る。

 私もこの歳まで生きてきて、それらにたくさん助けられてきた経験があるし力ももらった。これは紛れもない事実である。それらなくして今の自分は存在し得なかったと言い切ってしまってもいいと思うし、こうやって生きていくことすらも難儀だったかもしれない。

 そりゃそうだ。自分よりも経験値のある人がくれる言葉だし、偉業を成し遂げた実績のある人の言葉だもの。それだけで重厚であるし、ましてやそれが自分が信頼している人の言葉なら、憧れて尊敬している人の言葉ならば尚更だ。

 だから迷ったら、否迷う前にも、あの人の助言。って思っちゃうよね。
 尊いし。意識をしちゃうし。無視し難いし。

 ただ、未熟な自分は最近気が付いてしまった。いや、随分前から本質的に薄々気が付いていたのだろうけど。

 自分がアドバイスを貰いたい人ってさ、押し並べて凄い人じゃない? みんなどっかしら秀でてる人じゃない?

 うん、そりゃそうだよね、わかってる。当たり前のことを言っているのはわかる。だって自分が尊敬してない人からの言葉なんて石が転がる音と一緒だし、自分が信頼してない人の言葉なんてタイヤが軋む音と一緒だもんね。だからこそ、自分が敬意を払える人の言葉こそブッ刺さるわけだし、そもそも、助言を「助言」たらしめる所以であるとも思ってる。

 でもだからこそ、これって大丈夫かな、案外危険なんじゃないかな、って思ったのだ。だってそれらの言葉って、凄い人が経験に基づいて敷いた設計図の中で組み上げたその上に鎮座した、当人が発した言葉なわけだ。おまけに、その人の背景が見えない、ないし見せないくせして、背景ごと全ウエイト乗っけてる言葉が多い。だから物凄い威力があるわけ。

 だから一旦、そのまんま間に受けるのやめない? って思うわけ。

 一例失礼(口が気持ち良いので一度言ってみて。脱線)。敬愛するバンドマンが新聞でこう言ってた。

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しぶや・りゅうた=1987年5月27日生まれ。
ロックバンド・SUPER BEAVERのボーカル。2009年6月メジャーデビューするものの、2011年に活動の場をメジャーからインディーズへと移し、年間100本以上のライブを実施。2012年に自主レーベルI×L×P× RECORDSを立ち上げたのち、2013年にmurffin discs内のロックレーベル[NOiD]とタッグを組んでの活動をスタート。2018年4月には初の東京・日本武道館ワンマンライブを開催。結成15周年を迎えた2020年、Sony Music Recordsと約10年ぶりにメジャー再契約。「名前を呼ぶよ」が、人気コミックス原作の映画『東京リベンジャーズ』の主題歌に起用される。現在もライブハウス、ホール、アリーナ、フェスなど年間100本近いライブを行い、2022年10月から12月に自身最大規模となる4都市8公演のアリーナツアーも全公演ソールドアウト、約75,000人を動員した。さらに前作に続き、2023年4月21日公開の映画『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命-』に、新曲「グラデーション」が、6月30日公開の『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -決戦-』の主題歌に新曲「儚くない」が決定。同年7月に、自身最大キャパシティとなる富士急ハイランド・コニファーフォレストにてワンマンライブを2日間開催。9月からは「SUPER BEAVER 都会のラクダ TOUR 2023-2024 ~ 駱駝革命21 ~」をスタートさせ、2024年の同ツアーでは約6年ぶりとなる日本武道館公演を3日間発表し、4都市9公演のアリーナ公演を実施。2025年4月に結成20周年を迎え、SUPER BEAVER 自主企画「現場至上主義 2025」を4月5日、6日にさいたまスーパーアリーナで行い、さらに、6月20日、21日に自身最大規模となるZOZOマリンスタジアムにてライブを行うことが決定。

自身のバンドの軌跡を描いた小説「都会のラクダ」、この連載を書籍化したエッセイ集「吹けば飛ぶよな男だが」が発売中