ひとり孤独に死ぬとしても「エンディングノート」は作るべき!“おひとりさま”が自分らしい最期を迎えるため、財産や葬儀について書き残そう【書評】

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公開日:2025/9/11

おひとりさまのためのエンディングノート
おひとりさまのためのエンディングノート(齋藤弘道/文藝春秋)

 『おひとりさまのためのエンディングノート』(齋藤弘道/文藝春秋)は、一人で生涯を終える人を想定したエンディングノートであり、死に関わる準備をするうえで必要な知識を得る一冊である。

 エンディングノートとは、自身の死後を想定し、財産、医療・介護、葬儀などに関わる情報と意思を書き残しておくノートのことだ。遺言書と異なり法的効力はないが、本人の遺志を尊重したい遺族にとっては貴重な資料となる。

 多くのエンディングノートは、受け取る家族がいる前提で作られている。しかし現実には、最期を看取る家族がいないまま亡くなるケースも少なくない。その場合、葬儀はどうなるのか。財産は誰の手にわたるのか。自分の死を伝えたい相手に、どうすれば確実に知らせられるのか。想像を巡らせてみると、一人で死を迎える場合でもエンディングノートの準備は欠かせないとわかる。

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 本書はそんな“おひとりさま”向けに設計されたエンディングノートである。項目は「かかりつけの病院」や「連絡先リスト」など一般的なものから、「私らしくひとりの人生を楽しむためにやりたいこと」や「大切な人へのメッセージ」など感情面をケアするものまで幅広い。このノートを埋めていく過程で、自分自身と向き合い、自分らしい最期を迎える準備ができるよう、細やかに作られている。

 葬儀やお墓、財産などのトピックでは、事前に必要な対応や準備がコラム形式で解説されている。頼れる人がいない場合の死後事務の第三者委任など、実務的な打ち手も知ることができる。介護や認知症のサポートについても触れられ、判断力や身体能力が落ちたときに誰に頼ればいいか学べる点も心強い。

 印象に残ったのは、「孤独死を防ぐ」というコラムの下にある「キーパーソン(自分の意識がないときに知らせる人)」の記入欄だ。たとえ一人で人生を終えるとしても、最低限どんな人間関係を築くべきか、改めて考えさせられた。

 本書のおかげで、“おひとりさま”こそ早期からエンディングノートを書いておく必要があると思った。あらゆる“もしも”に対して家族以外で頼れる人、あるいは取るべき手段を事前に準備しなければならないからだ。私も同じ“おひとりさま”の立場として、本書を通じて老後や死後について解像度高くイメージした結果、何ひとつ準備していない現状の危うさに気づかされた。

 今はまだ元気な人も、老後なんて遠い未来のことと感じている人も、試しに本書を手に取り、埋められる項目だけでも書き込んでみてほしい。埋められなかった項目が浮き彫りになることで、これからどんな準備をしていくべきか考えるきっかけになるだろう。未来がどう変わろうとも、自分らしい最期を迎える準備をして早すぎることはない。本書はその準備を支える、心強い一冊となるはずだ。

文=宿木雪樹

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