事故物件といわれる訳アリ物件に住むとどんなことが起こるのか? 現役建築デザイナーの著者が描く、あなたの隣にもあるかもしれない怖い部屋の話【書評】
公開日:2025/9/13

【怖い場面あり、苦手な人は閲覧注意!】
『その物件、告知事項アリ: 建築デザイナーが明かす怖い部屋』(宮本ぺるみ:原作、宮本ぐみ:漫画/竹書房)は、実在する「告知事項アリ」の物件に足を踏み入れた人々が体験した恐怖を、現役建築デザイナーの視点で描いた実録ホラー漫画だ。紹介されるのは、事故死、孤独死、強盗殺人、不可解な事件といった、何かが過去に起こった部屋。そこに住んだ、あるいは関わった者だけが知る、逃げ場のない恐怖である。
2児のシングルマザー・宮本ぺるみは、夫の自殺をきっかけに多額の借金を背負いながら「株式会社ミヤモト」を立ち上げ、建築デザイナーとしての仕事を続けている。姉で経理担当・ぐみ、顧問弁護士・のっぽ、デザイナー・二木、見習い・シュンペーが所属し、彼女たちが実際に訪れて体感した出来事が綴られている。
紹介されている物件は事故物件のみならず、土地そのものに由来する因縁や、風水、地相の面から「住んではいけない」とされる場所まで多様だ。どのエピソードでも、謎の人影や物音、娘が不可解な行動を取る、といった怪奇現象に悩まされる依頼人の苦しみが描かれる。言葉にし難い違和感が、徐々に明確な形を持った恐怖に変わっていく過程には鳥肌が立つ。ページを捲りながら、まるで現場に立ち会っているかのような恐怖を体感できるだろう。
加えて、本作の魅力は恐怖体験だけではない。宮本とスタッフたちが、依頼人とどう向き合い、物件に潜む問題をどう解き明かしていくのか。そしてその過程で浮かび上がる人間関係や背景も語られ、読み手は「自分だったらどうするか」を考えずにはいられなくなってしまう。
他人事とは思えない恐怖。読後、つい背後を振り返ってしまいたくなる、そんなじんわりとした怪談を味わいたい人におすすめだ。
文=ネゴト / fumi
