ADHDは「事務」が苦手?当事者が教える、作業効率を上げるための方法!ポイントは「3つのギモン」【書評】

仕事術

公開日:2025/9/2

ADHDの僕が苦手とされる事務にとことん向き合ってみた。
ADHDの僕が苦手とされる事務にとことん向き合ってみた。(小鳥遊/大和書房)

「事務作業」はすべての仕事の土台。事務職に限らず、すべての人が行わなければならない作業だ。だが、事務作業に苦手意識を感じる人は多い。特に発達障害がある人にとって、それは強敵。先送り癖があって締め切りは守れないし、抜け漏れは当たり前。優先順位はつけられず、マルチタスクになると頭は真っ白。失敗するたびに「自分のせいだ」と落ち込む——そうやって事務作業に苦戦し、自己嫌悪に陥っているという人は少なくないだろう。

 そんな人にとって『ADHDの僕が苦手とされる事務にとことん向き合ってみた。』(小鳥遊/大和書房)は画期的な1冊だ。この本の著者・小鳥遊さんは、大人になってから発達障害の診断を受けたADHD当事者。就職する時は深く考えずに「営業は無理そうだから、とりあえず事務なら安全かも」と総務で働き始めたというが、事務作業にはかなり苦戦したらしい。

 1社目の会社では仕事がうまくいかずに休職後、退職。2社目でも休職。その復帰後、「このままではいけない」と生み出したのが、自分のADHDという特性と向き合いながらできる事務作業の方法。その方法のおかげで、小鳥遊さんは仕事の効率が格段に上がったのだといい、本書ではその方法について解説している。

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 小鳥遊さんによれば、事務には「型」があり、それは「3つのギモン」で動き出すのだという。

・ギモン①どうやる?(分解):仕事を小さな手順に分ける
・ギモン②いつやる?(日付):手順に日付を入れる

・ギモン③だれがやる?(担当):手順ごとの担当者を決める

 一見すると、「単純すぎる」と思うかもしれないが、頭がグチャグチャになっている時、この「3つのギモン」はかなり効くらしい。小鳥遊さん曰く、事務は、仕事を小さな「できると思える」手順に切り分けることで、進めやすくなる。手順ごとに日付を入れると、仕事を進めるペース配分が分かり、さらに、担当者を決めると、「自分がしなくては」と背負い込むのを避けられる。「どうやって」「いつ」「だれが」。これらをハッキリするだけで、事務はスムーズに進むのだそうだ。

 本書では、そんな基本のメソッドとともに、「こんな時どうしたらいい?」という具体的な悩みへの解決策も提示してくれる。「モヤッとした仕事、『よくわからない』せいで手が止まる」「『急ぎなんだけど……』に全部もっていかれて他の仕事が進まない」「計画通りに進まず、心が折れてしまう」「目の前のことに集中したいのに、他の仕事がチラチラ目に入る」……。

 どの悩みも、発達障害があろうがなかろうが、誰もが一度は経験したことがあるのではないだろうか。どの状況でも基本となるのは「3つのギモン」をもとに、仕事を細分化し、全体の見通しを立てること。それをどう実践していくかを教えてくれるから、すぐにでも真似することができそうだ。

「あなた自身は、そのままでいい」。小鳥遊さんは本書の解決策を活かす上で大切なポイントについてそう語っている。無理に自分を変えようとするのではなく、自分の傾向を掴み、「できない自分」を認めること。自分に合った工夫をしていくこと。「自分を変える」よりも「仕事を変える」、仕事をやりやすくする方法を考えることが重要なのだ。

 そんな言葉に勇気づけられる人は多いのではないか。事務作業に苦手意識があるなら必読。さぁ、あなたも、この本をもとに、事務作業を味方につけよう!

文=アサトーミナミ

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