男性看護師・えぼし「いくら稼げるようになったとしても辞めるつもりはない」【インタビュー】

ダ・ヴィンチ 今月号のコンテンツから

公開日:2025/9/7

※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2025年9月号からの転載です。

 私たちの命に寄り添い、心身ともに支えてくれる「看護師」という職業。一般的に激務で知られるその世界を面白おかしく、そして決してネガティブにならないように発信しているのが、男性看護師のえぼしさんだ。「看護師あるある」をまとめたショート動画は100万回再生を突破するものばかりで、なかには500万回を超えるものも! そんなえぼしさんがこのたび、初の著書となる『男性看護師ですが何か?』を上梓した。

「人生プランのなかに『本を書く』という目標がなかったので、声をかけられたときは『え? ぼくでいいんですか?』って本当に戸惑いました。ただ、せっかくの機会ですし、これも経験だなと思い、チャレンジしてみたんです」

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 とはいえ、動画投稿と看護師の業務で日々、フル稼働。執筆にはスマホを活用し、隙間時間を使ってコツコツと書き上げていった。

「職場への移動時間やお風呂に浸かっている時間は、ずっとスマホに文章を打ち込んでいて。それからすごく捗ったのは夜勤のときです。夜は基本的に患者さんも眠っているので、意外と余裕があるんですよ。本を読んだり、スマホをいじったりと、看護師それぞれの過ごし方をしていて。そこでぼくは、夜勤のときのフリータイムを執筆に当てました。トラブルさえなければ静かなのでかなり集中できましたね」

 そうして完成した書籍は家族や友人、ファンの方々からも好評だった。しかし、えぼしさんには、明確に届けたいターゲットがあるという。

「医療に興味のある人たちに読んでもらいたいんです。医療ドラマなどで焦点が当たるのは医師ばかりで、看護師の実態はまだまだ知られていないと感じていて。だからこそ、『看護師になりたい』『医療に携わってみたい』と考えている人たちに届けて、少しでも背中を押してあげられたらいいな、と思います。実際、看護師を目指す人たちから『本を読んで勇気づけられました』なんて感想もいただくんですが、苦労が報われる気がして、嬉しいです」

 そう話す通り、えぼしさんの活動の根底にあるのは、看護師という職業への熱い想いだ。

「動画投稿をはじめた当初は気軽に考えていたんですが、少しずつチャンネル登録者が増えてきて、それに伴って責任感も増してきました。ぼくの発言によって看護師に対するマイナスなイメージが付くのは避けたいですし、なにより、大変な仕事なんだと思い込んでほしくないんです。もちろん、大変なことも多いんですが、すごくやりがいがあるし楽しい。だから、ぼくは看護師を辞めるつもりもありません。よく『YouTuber専業にならないの?』なんて訊かれますが、動画投稿で何百万稼げるようになったとしても、看護師を続けていきたい。将来の夢に迷っていたとき、たまたま祖母に勧められて足を踏み入れた世界でしたけど、この道が正解だったんだなと思っています」

 えぼしさんの元には、看護師志願者のみならず、同業者からもたくさんメッセージが届いている。その大半がえぼしさんの動画に共感する声だというから、彼の存在はきっと、同業者の背中を押すことにもつながっているのだろう。

「今後は、全国各地の看護学校を訪問してみたいです。そこで頑張っている子たちに、看護師としてのやりがいを伝えられたらいいなと思います」

取材・文=イガラシダイ

えぼし●1997年、長野県生まれ。YouTuber兼男性看護師。チャンネル登録者数は約14万人(2025年7月22日現在)。「小児科のナースコール」というショート動画がバズり、一躍人気YouTuberとなる。また、手作りご飯動画も話題で、「次はレシピ本を出してほしい」というファンの声も多数寄せられている。看護師になったきっかけは、祖母が看護学校に勝手に願書を出していたから。

えぼしさんの本

 『男性看護師ですが何か?』
『男性看護師ですが何か?』(えぼし/KADOKAWA)1650円(税込)

男性看護師の日常を発信する著者は、いかにして現在地まで辿り着いたのか。幼少期のことから看護師になるまで、そしてYouTuberとしての現実も余すことなく綴った、オール書き下ろしのエッセイ集。初出し写真も多数収録!

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