山里亮太 妬みキャラから結婚、MCへ…時代と自分の変化の中で覚える劣等感 山里亮太×宮嵜守史【対談】/ラジオはパーソナリティ〝次第〟②
公開日:2025/9/20
『ラジオはパーソナリティ〝次第〟』(宮嵜守史/ポプラ社)第2回【全5回】
「結局、ラジオはパーソナリティのものなんだよ」。AD時代、放送作家に言われたこの一言が忘れられない――。ラジオ番組の賛否を全面的に背負うパーソナリティ。その魅力や必要な能力、聴く人を味方につける技術とは? TBSラジオ「JUNK」統括プロデューサーで本書の著者・宮嵜守史。山里亮太、ヒコロヒー、ジェーン・スー、アルコ&ピースら計9組の人気パーソナリティとの対談を通してラジオパーソナリティとは何かを考えた一冊『ラジオはパーソナリティ〝次第〟』をお届けします。

時代の変化と山里亮太の変化
宮嵜 あらためて対談するのはちょっと恥ずかしいね。
山里 こんな機会ないですもんね。宮嵜さんが本を出したときに、収録されてた対談の相手を見て思いましたよ。俺、予選落ちしたんだって(笑)。それが今回は新書化するから、敗者復活戦みたいな感じで急に呼び出されて。
宮嵜 いや、山ちゃんのことは自分の文章で書きたかったの。特に結婚のくだりとかさ。最近の『不毛な議論』はどう? 番組を始めたときと今を比べると、世の中の価値観が変わってるじゃない? 山ちゃんも番組が始まってからどんどん芸人としてステージが上がってる。時代の変化と自分の変化。それがあいまってる状況で、今の『不毛な議論』をどういう思いでやってるんだろうって、番組を聴きながら思ってた。
山里 そこは難しいところで。番組を始めたときと立ち位置は180度ぐらい変わってるじゃないですか。僕が結婚して、今の感じになって。スタートしたときはとにかく毒を吐けばいいと勘違いしていたから、いろいろな人の悪口を探しにいってました。「深夜ラジオといえば」をはき違えていた時期ですね。だんだん軌道修正をしていきましたけど、15年やってまだ答えがわからない。一度も正解を出せてないまま今に至るような感じです。
宮嵜 山ちゃんとしてはそういう感覚なんだね。
山里 僕の武器だった悪態とか、妬み・嫉みとか、恨み・つらみとか、毒舌とか、これをこのまま使っていくべきなのか答えに辿り着かないうちに結婚して。結婚するってドラクエで言うと転職したみたいなものだなって思うんです。ドラクエだとまったく違う職業になったら、またレベル1からスタートしますよね。だから、結婚してまた1から正解を探すようになって。時々「今日の放送は正解だったのかな?」と思う回もありますけど、それでもずっと不安なままです。
宮嵜 どんなところが難しい?
山里 『山里亮太の140』★1 の感じがラジオで出せればいいなと思うんですけど、それがなかなかできなくて。
宮嵜 それはどうしてなんだろう?
山里 電波に乗ってるからだと思います。それでビビっちゃうんでしょうね。
宮嵜 山ちゃんがやってる『140』は閉鎖された空間で、ライブに来てくれた目の前にいるお客さんを相手に喋っていて、配信もしてない。しかも終わったあとは何を喋っていたかみんな忘れちゃうルールだから、ぜんぜんラジオと違うんだよね。
山里 そうです、そうです。あとは、僕は『JUNK』で一番後輩なんですけど、まわりが偉大すぎちゃって。
宮嵜 でも、一番の後輩といってももう15年やってるし、今やテレビの帯番組でMCをやってる。
山里 そうなんですよ。だから、いい意味で、ラジオってちゃんと難しいなって思います。ライブをやって、テレビもやっているけど、「自分の中で一番難しい仕事は?」ときかれたら、圧倒的にラジオ。この15年間ずっとです。
宮嵜 自分の中で会心の出来だった回はある?
山里 会心の回、あったかなあ……。15年のうちに何回かは「いつの間にか、2時を越えてた」みたいな日はありますけど、その数がどれだけあるんだろう。だから、1週間のうちで終わったらホッとするのは圧倒的に水曜日です。水曜日を越えたら、1週間が終わったって思いますから。
宮嵜 それは昔からずっと言ってるよね。一般の人たちは土日でリフレッシュして、月曜日から始まるけど。
山里 僕は水曜日で終わって、木曜日に始まりますね。それは15年間まったく変わりません。
★1 2011年にスタートした山里のライフワークと言うべき1人喋りライブ。「140」はTwitter(現X)の文字数を意味し、自身のツイートを振り返りながら、140文字では伝えきれない思いを語る。2025年5月に全都道府県での開催を達成。