子どもは「学校に行かなくていい」堀江貴文氏が新著で伝える新時代の教育論【書評】
PR 公開日:2025/9/26

平日の朝。親は会社へ、子どもは学校へ行く、ありふれた日常。しかし、実業家の堀江貴文氏は、そんな当たり前の光景は「洗脳」の産物だと主張する。
堀江氏の新著『バカ親につけるクスリ』(主婦の友社)は、教育制度や学歴信仰、ひいては、親の役割における従来あった認識に、一石を投じる1冊だ。AIも台頭する時代では、価値観のアップデートが必要だと分かる。
子どもは「学校に行かなくていい」
堀江氏は元来、子どもは「学校に行かなくていい」と主張してきた。18世紀半ばにあったイギリスの産業革命期における成り立ちもたどると、学校は「歪みきった『常識』を植え付けるために存在する機関」であり、旧来型の企業が求める「従順な働き手」を育てる場所でしかないという。
そのため、2023年度に過去最多の34万人以上(文部科学省調べ)を数えた不登校児も問題ではなく、堀江氏は「子どもが不登校になって悩む」のも「バカ親」だと述べる。
現代は教育を受けるための選択肢も多様だ。親たちへ「子どもが不登校になったなら、むしろその『行かない』という選択と行動力を、褒めてやっていいくらい」とする堀江氏の主張に、うなずく人もいるだろう。
大学全入時代でめざすべきは「東大」一択
インターネットでアイデアをお金に変えやすくなった現代。就職の意義すらも揺らぐ現代では、堀江氏は「学歴なんて、もはや必要ない」とも主張する。
日本社会では「学歴偏重主義」が根強い。ただ今や、進学先を選ばなければ大卒の称号を得やすい「大学全入時代」となった。そのため、大卒自体の価値は薄れつつあるという。重宝されるのは卒業した大学名、すなわち「ブランド」だ。
堀江氏はかねてより「大学にはブランドとしての価値しかない。だから、東大以外に行く必要はない」と公言してきた。
大卒自体の価値が薄れつつあるからといって、それ自体が完全に否定されるわけではない。新卒での就職のように「学歴」が重視される風潮も残っている。そうした環境で「大学に関するブランドステータスが欲しい」と考えるなら、「東大に行くべき」というのが、本書にある論旨だ。
著者の堀江氏は、東大中退だ。かつては「卒業しておいたほうがいい」と、心配されたそうだが、「たとえ中退であっても東大に入学した人物というだけで十分『箔』はついた」と振り返っている。
子どもの「好きなこと」を尊重してただ見守るべき
学歴などに縛られていた従来の思想が根付く「バカ親」から脱却して、子どもたちに「好きなこと」を思いっきりやらせる。堀江氏が本書で唱える「ネオ教育論」の核といえるだろう。
AIが台頭する時代では、人の仕事が奪われると懸念する声もある。しかし、それはあくまでも、与えられた仕事を淡々とこなすような仕事にしか、あてはまらないのかもしれない。AIによって「仕事の時間が減り、自由な時間が増える」という堀江氏は、好きなことでお金が稼げる時代では「仕事は自分で作れ」と述べる。
AI全盛の時代では「好きを突き詰める人」が、稼げるようになるという。そして、ピッチャーとバッターの二刀流で世界を驚かせたメジャーリーガー・大谷翔平選手のように「代替不可能な『レア人材』」が活躍するのだ。
そうした人材を育てるため、親は子どもたちをとにかく「好きなこと」へ没頭させる。子どもにとって何が「幸せ」かの判断も本人に委ねて、役割は「資金面の支援だけ」と割り切ることこそが、親の本分だという。
今の子どもたちが大人になったとき、どのような社会になっているかは未知数だ。しかし、想像はできる。彼らの将来を明るくするため、大人である親たちは何をするべきなのか。「バカ親」から卒業して、子どもたちにとっての「賢明な支援者」になるのも選択肢のひとつにあると、考えさせられる1冊だ。
文=カネコシュウヘイ