アニメ第二期制作決定!『光が死んだ夏』作者モクモクれん「とても単純なことを、私はこの物語を通じて描きたいのかもしれない」人外との共生でこそ描ける“人間像”とは【インタビュー】

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更新日:2025/10/3

できるだけ自分とは違うキャラクターを出したい

――そもそもよしきは、どんなふうに生まれたんですか。

モクモクれん:生前の光は田舎社会でものびのびと生きられる、順応性の高い子だったけれど、よしきは逆で「こんなところからは早く出ていきたい」と思っている子。対になるような存在として考えていきました。ちなみに、よしきのお父さんはもともと東京で小説家を目指していたんだけれど、代々の家業である林業を継ぐことになってしまい、まだ若かったお母さんと結婚して戻ってきたという設定です。そのとき、お母さんは美容師の仕事を辞めざるを得なかったのですが、髪を切るのが好きなので今も希望ヶ山町のサロンで働いているという、ごく普通の家庭環境に育った子というイメージでした。

――あとがきでもうかがい知れますが、かなりしっかりと、キャラクターの背景と性格を考えていらっしゃるんですね。

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モクモクれん:わりと論理だてて「こういう環境で、こういう性格だから、こういう考えに至るだろう」と考えるようにはしています。感覚だけで描こうとすると、自分の内側にばっかりリンクして似たようなキャラクターばかりになってしまい、話が進まなくなってしまうんですよね。できるだけ自分とは違うキャラクターを出したいな、と思っています。そういう意味では、朝子がいちばん、私自身からは遠いかな。ただ、私からは遠いとしても、よしきやヒカルだけでなく、登場するキャラクターはみんな、現実のどこにいてもおかしくないありふれた人だと思うんです。よしきに感情移入してくださる海外の方も多いのですが、きっと、彼らの抱える葛藤には国境がないのだろうとも思います。だからこそ、そういう人たちのことをちゃんと見てるよ、ってスタンスで描きたいと、一貫して意識しています。

「見る」ことで生まれるもの

――「見る」というのは本作のテーマの一つですよね。よしきも、ヒカルや穢れの存在を「見て」しまったがために、関わり合いが生まれて、近づいてしまう。それはホラーの入り口であると同時に、他者との関係の始まりでもあります。

モクモクれん:誰かとわかりあうために歩み寄ろう、と口で説くのは簡単ですが、どんなに親しい友だちや身内にも直視したくない部分があると思うんです。頭ではわかっていてもどうしても不快感を覚えてしまう部分に、ちょっとずつ目をつぶってみんな生きているのだろうな、と。でも、その不快さに向き合ってみたら、実はもっと楽しいことが待っていたり、豊かになれたりするものがあるんじゃないかと私は感じていて……。不快なものも見てほしい、ということもまた、私が描きたいことの一つである気はします。

――相手のことをわかりたいともがきながら、絶対にわかりあえない異種だからこそ、まざりあうのは危険であると、折に触れて描かれるのも本作で大事なところです。でも感情だけでは解決できない、受け止めたくない部分もちゃんと最後まで見つめていきたいな、と思いました。

モクモクれん:犬や動物に対してしてあげたことで、喜んでいるように見えても、それが本当に喜びなのかどうか、私たちにはわからないじゃないですか。だから、作中にもちらりと書いたように、動物にアテレコする演出も私は好きではなくて……。昨今、ヒグマが話題ですけれど、頭のいい生き物なので、人間に懐くことは当然あるものの、友人になることはできないとする研究者の発表もあって。だからといって一方的に加害していいわけではない、という簡単に結論の出ない問いを含め、人外との関わり方については、いろいろと考えてしまいますね。

――アニメも佳境に入ってきましたが、原作もそろそろいろんなことが解き明かされていきそうな……。

モクモクれん:10巻前後でおさめるつもりで始めたので、だいたい予定どおりに着地するんじゃないかなと思っています。原作では、日常編・謎解き編・解決編としっかりわけて進めていたところを、アニメでは1話から暮林さんを登場させてくださったり、俯瞰したまなざしで構成されているので、また違う臨場感を味わっていただけているのではないでしょうか。私も、最終回を拝見するのが、今から楽しみ。詳しいことは言えませんが、原作ファンの方にも納得していただける結末が用意されていますので、どうぞ期待していただければと思います。

取材・文=立花もも

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