児童文学作家・樫崎茜の最新作!視覚障碍者の両親のもとに生まれた兄弟の成長を描く『ツバメの親子はどこにいる』

文芸・カルチャー

公開日:2025/10/16

 株式会社くもん出版より、児童文学作家・樫崎茜さんの新刊『ツバメの親子はどこにいる』が刊行された。本書は、視覚障碍のある両親のもとに生まれた兄弟の成長を軸に、昭和・平成・令和という50年以上にわたる時代を背景に紡がれる家族の物語だ。本書は、視覚障碍のある両親のもとに生まれた兄弟の成長を軸に、昭和・平成・令和という50年以上にわたる時代を背景に紡がれる家族の物語であり、また、当事者にとっては「差別の歴史」でもある。

昭和・平成・令和という50年以上の長大な時間の中で紡がれる親子の物語
昭和・平成・令和という50年以上の長大な時間の中で紡がれる親子の物語

【あらすじ】
――たぶん、人は、変わることができるのだ。
人も、町も、そして時代も、変わることができる。

 小学5年生の明照は、入学式が憂鬱でたまらない。春から1年生になる弟の音晴が、目の見えない母・ゆかりに、白杖をもって入学式に来ないでほしいと駄々をこねているからだ。入学式に来た母の姿をからかってきたクラスメイトたちと取っ組み合いのケンカをした音晴は、ケガを心配してくれたおじちゃんとその飼い犬・ダイスと友だちになって……。

advertisement

視覚障碍の世界を書き続けてきた著者による渾身の家族小説

 ブラインドクライミングを題材にした『星くずクライミング』(くもん出版・2019年)、視覚支援学校での1年間を丁寧に描いた『手で見るぼくの世界は』(くもん出版・2022年)と、綿密な取材を通じて視覚障碍をテーマにした作品を発表してきた樫崎茜さん。本書に込められた思いについて、インタビューで語られたメッセージを紹介する。

 社会はこれまで、障害を持つ人を「弱者」とひとくくりにしてきました。私自身も子どもの頃から「弱者」という言葉に触れ、その「弱さ」を必要以上に広げて解釈していたように思います。

 しかし、実際に交流してみると、彼らは決して弱くありません。確かにできないことはあるかもしれませんが、障害を抱えながら社会の中で生き抜いていること自体、強さの証だと感じます。だからこそ、見方を変えれば「お互いそんなに違わないのかもしれない」と気づけるはずです。

 私の本を通じて、その思いを少しでも感じ取っていただければ幸いです。お互いが扉をノックし、一歩ずつ歩み寄ることで、理解も関係性もより深まっていくのではないでしょうか。

視覚障碍を題材にした3部作
視覚障碍を題材にした3部作

■著者紹介

作:樫崎茜(かしざき・あかね)
長野県生まれ。2006年講談社児童文学新人賞佳作を受賞。デビュー作『ボクシング・デイ』(講談社)で第18回椋鳩十児童文学賞、『満月のさじかげん』(講談社)で日本児童文学者協会新人賞を受賞。その他の作品に、『ぼくたちの骨』『声をきかせて』(以上講談社)、『ヴンダーカンマー ここは魅惑の博物館』『星の町騒動記~オオカミさまあらわる~』(以上理論社)、『星くずクライミング』『手で見るぼくの世界は』(以上くもん出版)などがある。

絵:水谷有里(みずたに・ゆり)
イラストレーター。小説の装画や挿絵を多数手がける。装画を手かげた作品に『みかづき』(森 絵都 作/集英社)、『宙ごはん』(町田 そのこ 作/小学館)など。

■書誌情報

ツバメの親子はどこにいる
作:樫崎茜、絵:水谷有里
対象:中学生以上
定価:本体1500円+税
判型・ページ数:四六判/320ページ
ISBN :978-4-7743-3890-3

あわせて読みたい