私を見つけて/【吉澤嘉代子 エッセー連載】ルシファーの手紙#14

文芸・カルチャー

公開日:2025/10/25

 人が生涯のうちに出会える人間は何人だろう。その中でさらに心から分かりあえる人と出会える確率とは。出会ったとしても、その人と親しくなれるかは環境や状況によって変わる。それが家族でも恋人でも友人でも、かけがえのない一人に出会える幸運を、どう言葉にしたらよいのだろう。

「宇宙は果てしなく広いから、必ずどこかで自分を分かってくれる人に出会えるはず、っていう話。そう思うとさ、なんか自由になれる感じしない?」NHKドラマ『いつか、無重力の宙で』(武田雄樹:脚本)より

 ドラマ『いつか、無重力の宙で』にて、主人公の飛鳥に、友人のひかりが放つ台詞だ。あたらしい「宇宙は広い理論」にハッとした。

 これまで「宇宙の広さに比べれば君の悩みなんてちっぽけだ」と諭す場面を目撃するたびに、いつもモヤモヤしていた。宇宙がどれだけ広くても、悩みがどれだけちっぽけでも、私たちは一生を主観でしか終えられない。それならば自分の心も宇宙と同等の広がりを持つと言えるのではないか。私が消えても世界は回るらしいけれど、死後の世界を見聞きした人に出会ったことはないのだから。

 私たちは言葉や言葉にならないもので会話する。例えば星が瞬くような煌めきを感じあったり、あるいは説明のつかない引力みたいなもので惹かれあったり。

 私は歌を目印にして誰かに見つけてもらおうとしたのだと思う。届くかどうかも分からない。恥をかいて傷つくかもしれない。それでも、孤独の中でこそ、同じ星のもとに生まれた誰かと出会える気がする。

 その光を頼りに私を見つけてくれた人たちがいた。『いつか、無重力の宙で』の主題歌書き下ろしは、ドラマのプロデューサーと演出家が私の名前を出してくださったことから叶った。彼女たちは互いがそれぞれ私の歌を聴いてくれていた。その思いが年月を超えて現実になったとき、私は胸の奥がふつふつと熱くなるのを感じた。これは奇跡か、それとも必然か、分らない。確かなのは、私が歌い続けてきたからこそ、その目印を辿って出会いが生まれたということだ。

 二人の存在は、数えきれない星の中から見つけた惑星のように、孤独を優しく照らしてくれる。だから私はこれからも歌い続ける。届くかどうか分らなくても、この宇宙のどこかで誰かが私の光を見つけてくれると信じて。

<第15回に続く>

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吉澤嘉代子

1990年6月4日生まれ。埼玉県川口市鋳物工場街育ち。2014年にメジャーデビュー。バカリズム原作ドラマ『架空OL日記』の主題歌として1stシングル「月曜日戦争」を書き下ろす。2ndシングル「残ってる」がロングヒット。2025年4月20日に2度目の日比谷野外音楽堂公演「夢で会えたってしょうがないでショー」を開催。デビュー11周年記念日となる5月14日に『第75回全国植樹祭』大会テーマソング「メモリー」をリリース。9月放送のNHK夜ドラ『いつか、無重力の宙で』では書き下ろし楽曲「うさぎのひかり」が主題歌に。10月から全国ツアー「歌う星ツアー」でライヴハウスをめぐる。