ヨシタケシンスケ「何十年かかっても自分自身との相性が悪い人はいる」自身も悩み続ける著者による「お悩み相談本」《インタビュー》

文芸・カルチャー

公開日:2025/10/18

 ヨシタケシンスケさん

 絵本作家・ヨシタケシンスケさんの雑誌『MOE』での好評連載が、『お悩み相談 そんなこともアラーナ』(白泉社)として刊行。元気がない歴50年で、「元気のない人の考え方のプロ」を自称するヨシタケさんが、読者から寄せられた悩みに、アシスタントのアラーナちゃんが活躍するイラストを交えて答える1冊だ。モヤモヤや世の中への疑問と向き合ってきたヨシタケさんならではの言葉が詰まったまったく新しいお悩み相談本はどのように生まれたのか、ヨシタケさんに話してもらった。

悩みに対するどの答えも自分に言い聞かせている

『お悩み相談 そんなこともアラーナ』
『お悩み相談 そんなこともアラーナ』(ヨシタケシンスケ/白泉社)

――元気がない人の立場から答えるお悩み相談は、ポジティブなアプローチのお悩み相談とは違う出発点があったのかなと思うのですが、どういう連載や本にしようと思って始めたのでしょうか?

ヨシタケシンスケさん(以下、ヨシタケ) お悩み相談というコンテンツ自体は歴史が長くて、いろいろな方が名著を出されているので、わざわざ私がやらせてもらう意義を考えた時に、「私は元気がないんだ」というところに至りました。人様のお悩みを解決できる答えも持っていないし、自分自身を日々生き長らえさせるので精一杯な人間が、「つらい」「生きづらい」という思いに共感しかできないけれども、それプラス何かできることを探そうというのが、今回の僕にとっての新しいチャレンジでした。

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 元気のない人って、元気のない人にしか救われないんですよね。答えは答える人の数だけありますけど、その中でも一番ネガティブな人間の答えはこうだよと(笑)。それを読んだ人が「なるほどね」と思ったり、違うと感じたりしても、「自分だったらこっちの言葉を言ってほしかったな」って、自分で考えを組み立てるきっかけになればいいと思いました。

――「生きづらさを抱えた人だけが放つ魅力がある」「一人反省会をする人は上級な人間だと思っていい」など、多くの救われる言葉もあります。ヨシタケさんはもともと、そういう元気がないなりの対処法を見つけることができたのでしょうか。元気がある側の人たちのアドバイスに引っ張られた経験はないですか?

 ヨシタケシンスケさん

ヨシタケ いや、やっぱり、元気がないチームって、元気チームの人たちにずっと押され続けるしかないわけですよね(笑)。だから僕としてはこの本で、「自分だったらこういうふうに言ってもらえたら嬉しいな」と思える言葉を考えていきましたね。でも、どの答えも、最終的には自分自身に言い聞かせるような形になっています。お悩みに答えることで自分の悩みも減らせるんじゃないかっていう、淡い期待もありました(笑)。でも自分で自分に対して言うのって、効きが悪いんですよね。やっぱり人は人に救ってもらわざるを得ないんだなということが改めてよくわかりました。そういう作業が自分の絵本作りにも影響しましたし、とても楽しい時間でした。

――ヨシタケさんの絵本作りは、モヤモヤや不満などの気持ちから出発しているものが多いですよね。

ヨシタケ 自分が子どもの頃に感じたことや疑問に対して「こういうふうに言ってもらえたらもうちょっと気軽に悩めたのにな」っていうことを、今、大人になってわかる言葉で、当時の自分に伝えてあげたいっていうのが、絵本作りのモチベーションですね。そういう意味では、今回のお悩み相談もやっていることは一緒です。でも、僕がこのお悩み相談を毎月続けられたのは、誰よりもそういう弱い部分があり、誰かの言葉に救われたいと思っている切実さがあるからなんですね。悩んでいるいち当事者としての救われたさから出る答えだからこそ、リアルなのかなと思います。

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