言葉を「体験」するインタラクティブノベル『ダレカレ』。独特すぎるプレイ体験に込められた秘密を作者に聞いた【ゲームクリエイターyonaインタビュー】

文芸・カルチャー

公開日:2025/10/16

『ダレカレ』ノベライズ化に続き広がる次回作の構想

――ノベライズ化以外の発展や次回作など、次の動きを考えていたりしますか?

yona:『ダレカレ』がこれからも盛り上がってくれるととても嬉しいのですが、その点に関してはもう神様に任せるしかないと思っています。

 次の作品は、どうにか作りたいと思って企画を考えているところです。

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――すでに描きたいテーマは思いついていますか?

yona:すでにいくつか企画を提出しています。描けそうなテーマだなと感じたり、このテーマはまだ難しそうだなと感じるものもあったり、いろいろと難しい時期を過ごしています。

――『ダレカレ』とはまったく異なるテーマでしょうか?

yona:形や表現の仕方は大きく変わるかもしれませんが、核の部分は大きく変わることはないと思います。

 それこそ先ほど話したような「愛」みたいな部分は変わらず、伝え方が『ダレカレ』の場合は認識の歪みだったように、表現部分がちょっと変わるイメージです。ゲーム性ももちろん変わっていくと思います。

ことゲーム制作において読書は“勉強”

――自分の人生に影響を与えたと思う本や漫画があれば教えてください。

yona:三浦綾子さんの本が挙げられると思います。三浦綾子さん自身のことが書かれた『道ありき』、映画化もされた『塩狩峠』とか『氷点』も好きです。

 信仰者として、ご自身が「何を表現するべきなのか」というのをすごく考えられた方だというのが伝わってきて、とても尊敬しています。

 あとは、何度も読みこんだ『雪のたから』(パトリシア.M.セントジョン:著、松代恵美:訳/いのちのことば社)ですね。どちらかといえば子供向けの内容なのですが、可愛らしく小さいながらも確かな愛のお話で、読むたびに心を動かされ泣いてしまうんです。

――普段から読書はされますか?

yona:はい。ただ読むのは遅いので、1冊の本をゆっくり時間をかけて読んでいる感じです。最近はさくらももこさんのエッセイを読んでいます。

――どのようなジャンルを好みますか?

yona:エッセイです。人の人生を追体験できる部分も面白いですし、個人的にエッセイは軽い気持ちで読めるので、重いテーマの作品との間に読めるとすごくありがたい存在だと思っています。エッセイとテーマ性の強い作品を交互に読んでいるようなイメージですね。

――ゲーム制作において、読書による影響を感じますか?

yona:ことゲーム制作においては、勉強という名目で読むことも多いです。そのため、作品への説得力という部分での影響はありますが、「読書のおかげでアイデアを思いついた」ということは現時点ではありません。

 もちろん、本を読んでいる中で「この作者の方は取り扱っているテーマをこういうふうに見せるんだ」と感心することも多いので、演出やテーマの見せ方などは参考にしています。

――数ある表現の中で、ゲーム制作を選ばれた理由は?

yona:実は私、映画の脚本を書いてみたいと思っているんです。ではなぜゲームを作っているかというと、ストーリーを描きたいと思った時に「ゲームを作る」という筆を執ったから、というなんとも消極的な理由なんです。

 だからこそ、ゲームでしかできない表現とか、体験を通じたストーリーテリングに誠実に取り組みたいと思っています。

――普段あまりゲームをされない方に『ダレカレ』を勧めるとしたら?

yona:そんなに難しい操作もなく、1時間ぐらいで映画のような体験ができる作品になっています。なので、あまりゲームということで身構えず「お話をちょっと読んでみよう!」みたいな気持ちで遊んでもらえたら嬉しいです。

取材・文=河村六四

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