実際に探偵事務所に寄せられた驚愕の依頼。夫の不倫を受け入れて我慢する妻…そのマインドコントロールから不倫問題のスペシャリストが彼女を解き放つ!【書評】

マンガ

公開日:2025/11/4

※この記事はセンシティブな内容を含みます。ご了承の上、お読みください。

夫のメンヘラ不倫相手がとんでもない爆弾でした』(ママ探偵:原案、善哉あん:漫画/KADOKAWA)は、不倫というテーマを扱いながらも、単なる愛憎劇にとどまらず「心の支配」という現代的な問題を鋭く描き出す作品だ。

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 結婚して数年、出張帰りの夫の荷物からコンドームを見つけた妻・サナエ。そこから彼女の穏やかな日常は音を立てて崩れ落ちていく。だが本作の焦点は、怒りや悲しみといった一時的な感情ではなく、不倫発覚の後に起きる精神的支配にある。

 夫は徐々にモラハラ的な言動を見せ始め、サナエは次第に「拒んだら壊れてしまう」「自分が我慢すれば」と思い込み、夫の不倫を受け入れてしまうようになる。被害者が加害者に支配される構図。それは決してフィクションの中だけの話ではない。言葉や態度によって心を追い詰める見えない暴力は、現実でも多くの人を苦しめている。

 物語が動き出すのは、サナエが探偵事務所「ママ探偵」の扉を叩いたときだ。そこには、不倫問題のスペシャリストであり、数々の修羅場を見てきた探偵がいる。ママ探偵は、これまで受けた膨大な依頼の中から特に印象的だった実際のエピソードをもとに本作を生み出したという。探偵がサナエに差し出す浮気写真には、夫と知らない女性の姿が映っていた。その一枚が、彼女の心を決定的に変えていく。

 不倫やモラハラ、DVといった問題を抱える人の多くは、「恥ずかしい」「自分が悪い」と思い込み、誰にも助けを求められずに苦しんでしまう。だが本作は、その沈黙を破る勇気こそが自分を取り戻す第一歩であることを、物語を通して伝えている。

 スキャンダラスな不倫劇ではなく、心の支配から抜け出し、再び自分の人生を取り戻すまでの再生の物語。「一緒に進みましょうよ!!! 幸せの方向に!!!」夫の浮気調査というとマイナスなイメージを抱きがちだが、この作品はそれを前向きな行為として描いている。真実を知ること、そして自分を取り戻すこと。その勇気の火を、読む人の心に静かに灯してくれる一冊だ。

文=ネゴト / すずかん

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