上沼恵美子にお悩み相談「夫が元カノの手紙を隠し持っていた」→「それは男の習性です」読者の悩みをぶった斬る!【書評】
公開日:2025/11/10

時に毒舌アリの歯に衣着せぬ本音トークが人気のタレント・上沼恵美子さん。「こういう人に人生相談したら、悩みをぶった斬ってもらえそう…」と、ひそかに思っている人もいるのではないだろうか。実はその願い、すでに叶えられているのをご存じだろうか。なんと上沼さんは2023年12月から『週刊文春』でお悩み相談の連載をやっているのだ。
タイトルはズバリ『上沼恵美子の人生“笑”談 白黒つけましょ』。毎回毎回、様々な角度の質問に、常にユーモアをまじえながら(これ大事!)、褒めるところは褒め、ダメなことはダメとバッサリとまさに白黒つけてくれる。なんとも痛快で、読者のコチラまで元気になってくるほど。もちろん連載は大人気で、このほど一冊にまとまることになった(本のタイトルは連載と同じ『上沼恵美子の人生笑談 白黒つけましょ』〈文藝春秋〉)。
バラエティに富む相談
本書はこれまでの連載のなかから41回分を抜粋したベストセレクション(注:連載はまだ続行中)。「芸人になりたい中2の息子」「マッチングアプリ婚、認めるべきですか?」「仕事と結婚生活どっちも手に入れたい」「親の「終活」は準備するべき?」「会社で隣に座る男がタバコ臭いんです」「障碍のある息子 私はどう生きれば」「夫が隠していた元カノからの手紙」「父と見知らぬ女性のツーショットを発見」などなど、質問タイトルを見ただけでも実にバラエティに富むというか方向性がバラバラというか…。こうした質問に毎週ガチで答えるのは大変そうだが、「部屋にこもって頭に変な汗をかきながら、悶えながら」(「はじめに」より)上沼さんはやってくれる!
たとえば「芸人になりたい中2の息子」については、なんでもネットの答えに頼って自分で決められない若者が増える中で、「その年で自分が生きたい人生を決めているのはエライ!」と褒めつつ「ただし芸人はそう簡単には売れない」と釘を刺し「売れないからやめるかどうか決めるのは本人だが、やるまえに止めるとしこりだけ残る」とアドバイス。確かにどんな夢にせよ自分で決めた答えを進まない限り、何かあったときに誰かのせいにするのが人の性。この場合は「芸人」だが、思わず過去を振り返り「そうなのよね〜」と激しく相槌をうってしまった。
ちなみに上沼さんはこの連載を引き受けるにあたって、「世の人生相談にありがちな『関係者の皆さんでよく話し合ってみてくださいね』式の紋切型のお答えだけはしないようにしよう」と決めたそうで、「そんなこと書くくらいなら『北の窓にええ塩盛れ』のほうがナンボかマシ」と頼もしい。その言葉の通り、夫婦の微妙な話や人生の深い悩みなど、なかなか白黒つけがたい難問の数々にも、時に厳しく温かく、しかもクスッと笑える様々な言葉をかけてくれるのだ。
今年の4月に古希を迎えられた上沼さんは、「魑魅魍魎」ともいわれる芸能界での生活も半世紀以上。酸いも甘いも嚙み分けたその人生経験に裏打ちされた答えは説得力大(なにせ専業主婦経験も嫁姑問題も夫婦別居も当事者経験ありだ)。「人生、なんとかなる。まだまだこれから」と、不思議なほどに元気が出る一冊だ。
文=荒井理恵
