平凡な金欠女子大生とお金持ち変人イケメン美大生。嵐のような出会いから始まる悩める大学生たちの青春群像劇【書評】

マンガ

公開日:2025/12/1

嵐に舞うプシュケ』(おむ・ザ・ライス/KADOKAWA)は、どこか満たされない思いと向き合う若者たちを描いた青春群像劇。平凡な女子大生と、イケメンでお金持ちだけど変人な男子大学生。突然やってくる嵐のような出会いが、少しずつ2人の人生を動かしていく。

 経済学部に通う卯野みつばは、生活のためにバイトを掛け持ちしている金欠女子大生。ある日スーパーで偶然に出会った、芸術専攻の学生・満谷怜の研究室の掃除を3000円で頼まれる。怜は口数が少なく愛想もない。おまけに偏食。ブランド服を汚しても気にしない変人だった。偶然の出会いをきっかけに掃除の腕を気に入られたみつばは、定期的に研究室の掃除をするようになり、怜と関わりを深めていく。

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 みつばはごく普通の大学生だが、怜は読モとして知られ容姿も家柄も申し分ない存在。怜の周囲には、美人で気の強い堤や多くの友人たちがいる。普通に暮らしていれば決して交わらなかった2人。出会った当初、みつばにとって怜はまるで違う世界の人間に思えたが、作品に向き合う時の真剣さやふと見せる優しさに触れ、少しずつ心を動かされていく。怜もまた、真っ直ぐで飾らないみつばに興味を抱き始める。ゆっくりと近づいていく2人の距離に、思わず心を掴まれるだろう。

 そんな2人の交流とともに、大学生ならではのリアルな悩みも描かれる。他人と比べてしまう自分、就活への焦り、やりたいことが見つからない不安――そんなみつばの姿に、自分を重ねる読者も多いだろう。一方で、恵まれて見える怜も著名な両親の中で息苦しさを感じ、「何者かにならねば」と焦りを抱えているのだった。

 みつばと怜、それぞれが抱える等身大の苦しさは、読者自身の心にも重なるはずだ。誰もが何かを求めながら、満たされない日々を生きている。奇跡のような偶然から始まった2人の関係は、やがて互いの心を揺らし、前に進む勇気をくれる。青春の痛みと希望を同時に描いた、優しくも力強い物語を、ぜひ手に取ってほしい。

文=ネゴト / fumi

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