出産後に発覚した、借金、不倫、暴力を繰り返すウソにまみれた夫の本性。娘と自分を守るために妻が選んだ道は?【書評】

マンガ

公開日:2025/11/24

 人の本性を見抜くことは難しい。優しい言葉も、思いやりの態度も嘘で塗り固められていることがある。こと恋愛の話となると、恋人同士なら別れを選んで終わらせられるが、結婚して子どもができた段階となるとそうはいかない。離婚の手続き、養育費の交渉、子どもの引き取り手など、様々な手続きや問題が発生する。

DV不倫夫は息を吐くように嘘をつく』(おもちゃのパンダ:原作、すぅ:漫画/KADOKAWA)の主人公・美紀は、同じ職場の後輩・卓也からの猛アタックを受けて授かり婚をした。結婚後すぐに会社を辞めた卓也に不安を抱きながらも、娘を可愛がり家事に取り組む姿に、美紀は安心と希望を見出していた。しかし卓也の仮面は少しずつはがれていく。見栄を張っては借金を重ね、不倫を繰り返し、平然と嘘をつく。やがて、美紀は幼い娘の目の前で暴力を受けるようになる。

advertisement

 DVの恐怖に怯えながらも、美紀は夫の優しい一面を信じようとしていた。だが、不倫相手とのSNSを見た瞬間に打ち砕かれる。そこに並んでいたのは、家族を踏みにじる内容の嘘の数々だった。美紀は離婚を決意するが、慰謝料や養育費の交渉、弁護士費用など、嘘つきの旦那を相手にした終わりの見えない手続きに心も体も限界に追い込まれていく。

 卓也の最大の罪は、本心を最後まで誰にも見せなかったことだ。娘を愛しているように見せかけて突然姿を消す。反省しているように装って嘘を重ねる。しかも不倫相手すらも嘘で傷つけられていたのだ。彼のどの言葉が真実だったのかは誰も分からない。

 信じていたからこそ裏切られたときの痛みは大きい。美紀は、本当に愛があったのか分からず苦しみながらも、娘のため、そして自分のために絶望の中で前を向こうとする。一人の男の嘘によって人生を大きく変えられた女性の物語は、嘘の残酷さを突きつけると同時に、そこから立ち上がる強さを描いている。嘘や裏切りで傷つけられた人に勇気をくれる作品だ。

文=ネゴト / くるみ

あわせて読みたい