“恐竜好き”2歳児の心をつかむ! 絵本みたいに読める図鑑が登場『よみきかせずかん きょうりゅう』【書評】
公開日:2025/11/19
図鑑を買っても読まれない? “恐竜好き2歳児”の親が悩む本選び
2~3歳になると、多くの子どもが自然と「きょうりゅう」に強い関心を示し始めます。ティラノサウルスやトリケラトプスの名前を覚えたり、おもちゃを持って遊んだり――親としてもうれしい成長の瞬間です。
けれど、いざ恐竜の本を買ってあげると、これがなかなか読まれない。「字が多くて難しい」「説明が長く、知らない恐竜ばかりで途中で飽きてしまう」といった問題に直面することもしばしば。実際、2歳3カ月の息子を持つ筆者も数カ月前に“恐竜本デビュー”に失敗しています。
そんな“恐竜本デビュー”の壁をやさしく越えさせてくれたのが、『よみきかせずかん きょうりゅう』(真鍋真:監修、ケータ:絵/KADOKAWA)です。

「絵本みたいな図鑑」で、恐竜の世界を体感する
本書の特徴は、あえて紹介する恐竜の数を絞り込んでいること。ティラノサウルス、トリケラトプス、ステゴサウルスなど、子どもがよく知る人気種を中心に10種程度のみを掲載。
そのぶん1種あたりのページ構成が充実しており、見開きごとに大きなイラストで見た目や特徴を観察したあと、「おはなしページ」で恐竜のくらしや行動を想像できるようになっています。情報を羅列した図鑑というより“絵本のテンポ”で読める構成なので、読み聞かせにもぴったりなのです。
“ガブッ!”“ブーン!”──音で広がる想像の世界
ページを開くと、恐竜たちが生き生きと動き出します。スピノサウルスが「ガブッ!」とかみつき、ステゴサウルスがしっぽを「ブーン!」と振りまわし、パラサウロロフスが「ブオーッ!」と鳴く――そんなオノマトペがこの図鑑には満載。
ティラノサウルスが獲物を仕留めた場面には、「やったあ!きょうの ごはんを ゲットしたぞ!」というセリフも登場。読みながら思わず声に出したくなるような楽しさがあります。説明的な文章ばかりの図鑑とは違い、恐竜の行動と音のリズムで子どもを自然に引き込み、親子で一緒に声を出して楽しめる作りになっているのです。

筆者が2歳3カ月の息子に読んでみたところ、ティラノサウルスの登場シーンでは「ガブー!!」と叫んで笑顔。トリケラトプスの角の戦いでは、私と頭を突き合わせて“戦いごっこ”を楽しんでくれました。親としても、オノマトペが多いぶん読み聞かせしやすく、会話やリアクションを交えながら読めるのがうれしいポイントです。
2歳から楽しめる、“はじめての恐竜図鑑”
この恐竜図鑑は全ページがひらがなで書かれており、まだ文字を読み始めたばかりの子どもでも挑戦できます。ティラノサウルスやトリケラトプスなど超メジャーな恐竜から登場するので、まだ恐竜を数匹しか知らない段階でも夢中になれて、少しずつ興味が広がっていく構成。「難しい知識を教える」のではなく、「恐竜の世界を一緒に感じる」ことができる点が、本書最大の魅力です。
本書の監修は、国立科学博物館・名誉研究員で群馬県立自然史博物館特別館長の真鍋真氏。恐竜研究の第一人者である真鍋氏は、「この形の恐竜は、こんな暮らし方をしていたかもしれない」と想像する体験こそ、子どもの観察力や言葉のキャッチボールを育む第一歩になると語っています。科学的な裏づけと絵本的な楽しさを両立した構成は、まさに“はじめての恐竜図鑑”にふさわしい一冊といえます。
“知る”より“感じる”体験を親子で
絵を手がけた恐竜イラストレーター・ケータ氏の絵は、迫力がありながらもやわらかく、子どもが安心して楽しめるタッチ。
情報を詰め込む図鑑とはひと味違う、「体験として読む図鑑」。恐竜に興味を持ち始めた子どもと、親子で笑いながらページをめくれる“最初の一冊”。そんな楽しい時間をくれる、絵本のような図鑑です。
文=古澤誠一郎
