短時間で本格的なチキンカレーが出来た! 家庭料理の域を超えた驚きのレシピ【書評】

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公開日:2025/12/19

一条もんこのあしたも食べたいチキンカレー100
一条もんこのあしたも食べたいチキンカレー100(一条もんこ/主婦の友社)

 チキンカレーといえば、家庭料理で出番の多い料理のひとつ。そんな身近な料理を、平均3ステップ・15分以内で驚くほど本格的に仕上げてしまうレシピ本が『一条もんこの あしたも食べたいチキンカレー100』(一条もんこ/主婦の友社)だ。

 著者は、年間800食以上のカレーを食べ、これまでに1500品以上のオリジナルカレーレシピを生み出してきたスパイス料理研究家。テレビ出演も多く、これまでもさまざまな人気カレー本を手がけてきた“カレーのプロ”だ。レシピの信頼性は折り紙つき。

 さらに本書には、スパイスを使った本格派から、市販品アレンジまで幅広いレシピがそろっており、料理好きにも初心者にも役立つ内容となっている。

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 実際に本の中から4品を作ってみると、「どうして短時間でこんなに美味しくなるの?」「こんな市販品アレンジがあったなんて!」と驚くものばかりだった。ここからは、実際に作ったレシピを紹介しながら、本書の魅力をレビューしていく。

えのきのしっとりチキンキーマ

 これは作った瞬間に「家のキッチンでこんな味が出せるのか」と驚かされた1品。

 具は鶏ひき肉と、細かく刻んだ玉ねぎ、えのきだけのみ。特殊なスパイスはクミンパウダーくらいで、あとはプレーンヨーグルトなど容易に入手できる食材を使って作れる約10分のレシピだ。

 食べてみると、クミンの風味とヨーグルトの酸味が爽やかで、さっぱりだけどメチャクチャ本格的な味わい! 滑らかに一体化した鶏ひき肉とえのきの旨味に、玉ねぎのシャキシャキした食感が重なり、10分で作ったとは到底思えない完成度。妻も「これ、お店みたいな味する!」と喜んで食べていた。

 鶏ひき肉使用でヘルシーなのに美味しく、罪悪感なく“バクバク食べられる”キーマなので、我が家のスタメンになりそうだ。

とろっとなすのチキンカレー

 具は鶏もも肉となす、玉ねぎ。クミンシードを使う以外は特殊な調味料も使わないが、できあがった瞬間に漂う香りは完全に“カレー屋さん”のそれだった。

 こちらも切る→炒める→煮るの3ステップで10分完結のレシピなのだが、最初に玉ねぎを炒めるときにクミンシードも一緒に炒めるテンパリングの効果だけで、普通のチキンカレーに本格感がグッと増すのに驚いた。

 そこに鶏もも肉となすが加わると、短時間の加熱でも旨みがしっかりと立ち、スパイス感と野菜の甘みがバランスよく混ざり合う。なすのとろっとした食感と鶏肉のジューシーさが調和して、かなり奥行きのある味に仕上がっていた。

 ゴロッと大きい具も食べごたえがある一方で、市販のルウだけで作ったカレーより後味は軽やかで、飽きがない。まさに“短時間で作る理想のチキンカレー”といえるレシピだ。

バターチキンに憧れたチキンラーメン

 ここからは変化球の市販品リメイクレシピにもトライ。

 まずはド定番の袋麺・チキンラーメンを使った5分完結のレシピだ。チキンラーメンを細かく砕き、牛乳・トマト缶・バター・カレー粉などを合わせて煮込むと、これが奥深い味わいの“スパイスカレー麺”に変身!

 牛乳のコク、トマトの酸味、バターのまろやかさ、スパイスの香りが一気に押し寄せてきて、口の中で旨味が爆発。なかでも卵黄が絡んだ部分は背徳的な美味しさだった。

 妻もあまりの美味しさに「一瞬で食べ終わっちゃった……」と喜びつつも悲しんでいたので、中毒性と背徳感の高いレシピといえるだろう。

焼き鳥缶の親子カレー丼

 最後は、レトルトカレーと焼き鳥缶を合わせて卵でとじるだけ――なのに、驚くほど“ちゃんとした丼もの料理”になるレシピ。

 食べてみると、焼き鳥缶の甘辛いたれがレトルトカレーに深みを出し、味に丸みと奥行きを与えてくれているのに驚く。イメージとしては、蕎麦屋で出てくる「あの和風だしの効いたカレー」に近いような、どこか懐かしく、ホッとする味わいだ。

 レトルトカレー単体よりも具材の豪華感が増すし、卵を入れることで栄養もアップ。しかも卵とじしただけなのに「今日は料理をしたな」という達成感も味わえる。急いでいる日の“救世主レシピ”として、これほど頼りになる1皿はないだろう。

読み終えて感じた、“カレー本としての強さ”

 本書を1冊読み通し、4品を実際に作ってみて強く感じたのは、時短と本格が見事に両立している本だということ。まず、平均3ステップ・15分以内で作れるという圧倒的な気軽さがいい。そのうえで味はどれも“きちんとしたチキンカレー”になっているのが本当に頼もしい。

 さらに、初心者でも迷わず作れるよう、鶏肉の部位の特徴や玉ねぎの切り方ごとの味の違い、ルウとカレー粉の使い分け、基本的なスパイスまで、チキンカレーの基礎を理解できるページも冒頭にまとまっている。

 カレー作りに自信がある人も、いまから始めたい人も、手元に置いて損のない1冊といえるだろう。

調理・文・撮影=古澤誠一郎

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