トム・ブラウン布川ひろきのエッセイ連載「おもしろおかしくとんかつ駅伝」/ 第22回「ノンアルビール」

文芸・カルチャー

公開日:2025/12/26

僕はお酒がすごく好きです。誘われたら9割方断らずどこでも行きます。最近は1人でも飲みに行ったりもしています。夜中に仕事が終わったらそこから誘うのも悪いので1人で飲んだりしています。

ほぼ毎日飲みますが、一応休肝日とやらを少しは気にして週6くらいでお酒を飲んだりしています。でも、お酒を飲んだ帰りは近くのコンビニでノンアルビールを1本買って飲んでから家に帰ります。お酒を飲まない日はお酒を飲みたくて飲みたくて喉が爆発しそうなので、ノンアルビールを買って1本飲んでから家に帰ります。今のノンアルビールの味はほぼお酒と一緒なので非常に助かります。

今回のエッセイを書かせてもらって気づきましたが、僕はお酒が好きでめちゃくちゃ飲んでるかと思っていました。でも、よく考えたら本当に毎日飲んでいるのは

「ノンアルビール」

だったのです。
お酒を飲もうが飲まなかろうが、ノンアルビールは家に帰る前のルーティーンなので。
家の中ではあまり飲まずに、家の近くにある線路が見える柵に座りながら夜な夜な15分くらいかけて1人で飲んでいます。
その時間は動画見たりとかエゴサーチをしてみたりとかは何にもせず、ただ線路を眺めてたりもします。この時間はお笑いのことは一切やらないことにしています。なのでこのノンアルビールの時間がなかなか好きでもあるのです。

ある日、あまりに嫌なことがあってお酒を飲みたくて飲みたくてしょうがない日があったのですが、やらなければいけないことがあり飲めませんでした。「このままでは全ての仕事に引きずってしまう」と思いながらノンアルビールを飲んでいました。
するとご夫婦が僕に向かって近づいてきて

「布川さんですよね? いつもニッポン放送圧縮計画聴いてます。」

僕らがやっているPodcastを聴いてるとわざわざ言いに来てくれてその後に

「実は仕事を休職していたんです。でもニッポン放送圧縮計画を聴いて何かパワーがみなぎってきて復帰できました。ありがとうございます。」

あらあら。まさか、ただただ僕らがケンカをしまくっているだけのPodcastが人生の岐路になってくれているなんて。

「これからもケンカしたくないけど仕方ない時はしますね。」
と、言ったら苦笑いをして去っていきました。
ノンアルビールを飲んでたおかげでそんな人もいるんだなぁと知れましたことです。

ある時深夜にノンアルビールを買おうとコンビニに行ったらものすごいイケメンの男の子が接客をしてくれました。

「トム・ブラウンさんですよね? めっちゃ好きです。」

なぬ。こんな僕とは人生全く違うのではというファイヤーイケメンが好きでいてくれてるなんて。僕は聞きました。

「めちゃくちゃカッコいいんですけど何かやってるんですか?」

「いやいや! 実はアイドルをやってるんですけどなかなかブレイクしなくて。でも頑張ります!」

なんと。ファイヤーイケメンの子はしないと思っていたのですがコンビニの夜勤をやっているアイドルがいたのです。
僕なんかとは人生が全く違うと思っていたのですが実はほんの数年前の僕と変わらないようなことをしていたのです。

「いつか共演したいです。」

なんて言ってもらってすごくエネルギーをいただきました。これもノンアルビールを飲んでたおかげだと思います。

お酒の席での話しはよく聞きますがノンアルビールを飲んでの話しはあまりメディアで聞いたことがありません。

よし。決めた。
いつかどこかで僕がやりたい番組をやれるようになったら
「ノンアルビールのつまみになる話」という番組を立ち上げたいと思います。

<第23回に続く>

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