だしを取らなくても、素材の味だけでおいしいスープができた! この冬は“きれいな味”で体をリセット【書評】

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公開日:2026/1/23

ウー・ウェンの100年スープ
ウー・ウェンの100年スープ(ウー・ウェン/主婦の友社)

 一口食べたら体に染み入る。そんな料理といえば、スープではないでしょうか。レシピ本『ウー・ウェンの100年スープ』(ウー・ウェン/主婦の友社)によると、中国では、スープ=【湯:タン】は栄養たっぷりの「おいしい水分」と言われているそうです。

 ウーさんが提案するのは、雑味がなくすっきりとした「きれいな味」。この味を作るために、素材のもつ力を効果的に引き出すコツを紹介してくれます。

 本書から「大きな肉だんごとじゃがいものスープ」「きくらげと干ししいたけの酸辣湯(サンラータン)」「千切り大根と油揚げのみそスープ」を作ってみました。どのスープも、飲むたびにスーッと体に染みて、毎日がんばっている心と体をリセットしてくれるようなやさしい味。おいしさも格別で、もう一口、もう一口…と食べる手が止まりませんでした。

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簡単なのに見栄えがよく、感激するほどおいしいおかずスープ

 肉だんごのスープは、仕事をしながら2人の子どもを育てたウーさんが、忙しくてピンチの日に作っていたというレシピ。簡単なのに見栄えがして「これさえ作っておけばみんなが喜ぶ」おかずスープだといいます。鶏、豚、合挽き…といろんなレシピが載っていますが、その中から、鶏ひき肉を使った「大きな肉だんごとじゃがいものスープ」を作ってみました。

 鶏ひき肉は、もも肉とむね肉が半分ずつ。1つ100gの大きな肉だんごは、だしを閉じ込めるからふんわりやわらかくジューシーに仕上がるそうです。

 黒こしょう、しょうが、長ねぎなどを刻んで入れます。風味づけ、くさみとりなど、それぞれに役割があるので、ひとつ入れるたびによくまぜるのがポイント。古漬けのザーサイは中国料理らしい素材。これを入れると、スープに深いうまみが出ました。

 じゃがいもは、煮崩れしにくいメークイン。今回は小さめだったので丸ごと入れました。

 味つけには、酒とあら塩しか使っていません。ただし、酒はたっぷり入れます。

 驚くほどの芳香で深みのある味わいになりました。見栄えのよさだけではなく、肉だんごは驚くほどジューシー、じゃがいもはホクホク。できたて熱々をみんなに振る舞いたくなるおいしさでした。

乾物を一晩つけるだけで「一番だし」に

 長ねぎ、トマト、玉ねぎなど、うまみの強い野菜から「一番だし」を取るレシピが豊富に紹介されている本書。その中から、きのこを使った「きくらげと干ししいたけの酸辣湯」を作りました。

 きくらげ、干ししいたけは、うまみが抜けないようにひたひたくらいの水につけ、一晩かけてゆっくり戻すのがポイントだといいます。

 卵は1人分につき1個。おなかもふくれるスープになります。

 調味料は黒酢、しょうゆ、白こしょう、仕上げにごま油。うまみの強い酢を加えることで塩分を減らす効果もあるそうです。酸辣湯の「辣」とは、こしょうのこと。どっさりと大量に入れるので驚きました。

 こしょうがピリリときき、黒酢はまろやか。寒い季節、体が芯から温まる味。フーフーと冷ましながらあっという間に飲み干してしまうおいしさでした。中国ではきのこを「食用菌=食べられる菌類」といい、腸をととのえ、コレステロール値や血圧も下げてくれる素材として重宝されているそうです。

こしょうやラー油でいただく、約10分で完成のみそスープ

 大根、かぶ、白菜などの白い食べ物は、冬に乾燥しやすい呼吸器をうるおしてくれるそうです。寒いこの時期に風邪予防をしたくて、「千切り大根と油揚げのみそスープ」を作ってみました。

 ウーさんの料理では、素材の切り方にもこだわりがあります。千切りは、水分が出すぎず、味が染み込みやすい切り方だとか。スライサーで簡単に切れるのも魅力です。さらに、すぐに煮えるので、調理時間は10分ほどでした。

 油揚げやねぎも同じような千切りにすると、食感がそろってスープの中でよくなじむそうです。

 ごま油で素材をじっくり焼くと、こうばしい香りがしてきました。

 味つけは、みそを少し入れるだけのやさしい味。だからこそ、こしょうやラー油(お好み)をかけると、素材のうまみが驚くほど感じられます。油揚げが入って満腹感もあるから、小腹がすいた時にもおすすめ。

インスタントがなくても簡単でおいしい「一生もの」の家庭料理

「スープは健康に生きていくため、なくてはならない存在です。」

 ウーさんと、ウーさんの母親の料理人生を足すと100年くらいだといいます。 「100年スープ」というタイトルには、母から教わったスープの大切さを伝えていきたいという想いが込められているとか。滋味深いという言葉がよくあうウーさんの料理は、中国に伝わる家庭料理の歴史と知恵に支えられているようです。ご本人が語る「一生もの」という言葉がしっくりきました。

 レシピはどれもシンプルで、あっという間に完成するものがほとんど。でも、インスタント食品は一切使われていません。インスタント食品は便利ですが、そればかりでは体調を崩しやすいですよね。素材のもつ力を生かせば、こんなにも簡単でおいしい料理ができることがわかり、筆者にとっては、それが最も大きな収穫でした。

 また、このレシピ本は、料理の楽しさを呼び起こしてくれる1冊でもありました。自分のために、誰かのために、心を込めて作る料理は喜びにつながると感じたからです。ウーさんの90歳のお母さんは、今でも中国で元気に暮らしているといいます。本書があれば、体にやさしく、ストレスが少なく、みんなが喜ぶ家庭料理を作り続けられそうです。

調理・写真・文=吉田あき

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