小泉八雲『怪談』が“美麗絵師”のイラストで現代に――「耳なし芳一」「雪女」の絵物語で朝ドラもより楽しめる【書評】

文芸・カルチャー

PR 公開日:2026/1/22

『夜想絵物語 耳なし芳一』
『夜想絵物語 耳なし芳一』(小泉八雲:著、おく:画、戸川明三:訳/トゥーヴァージンズ)
『夜想絵物語 雪女』
『夜想絵物語 雪女』(小泉八雲:著、水溜鳥:画、田部隆次:訳/トゥーヴァージンズ)

 NHK朝ドラ「ばけばけ」のヘブン先生のモデルといえば、「小泉八雲」として知られるラフカディオ・ハーンのこと。明治期の日本に新聞記者として来日し、中学校教師などをしながら日本研究を続け、積極的に日本の文化を世界に発信した人物だ。特に松江や熊本での滞在中に出会った日本の怪談や民話などをまとめた『怪談』は、多くの日本人にとって怪談話の「原風景」となっている物語が集められた1冊。筆名の「小泉八雲」が帰化した後に改名した日本名のため、オリジナルを書いた人物が外国人のハーンだということを、「ばけばけ」が放映されるまで知らなかった人もいるかもしれない。

 そんな小泉八雲の集めた怪談の中でも特に代表的な作品といえば、「耳なし芳一」や「雪女」が思い出される(名作アニメ『まんが日本昔ばなし』の初期の代表作だったので、幼心にゾッとした記憶を今も持っている方もいるだろう)。このほど、これらの名作を人気イラストレーターたちが描きなおす新シリーズ「夜想絵物語(やそうえものがたり)」(トゥーヴァージンズ)が登場し、美しくも悲しい物語の世界に新たな命が吹き込まれた。第1弾の刊行(1月22日)は「耳なし芳一」と「雪女」だ。

夜想絵物語 耳なし芳一』(小泉八雲:著、おく:画、戸川明三:訳/トゥーヴァージンズ)は山口県に伝わる話で、壇ノ浦で滅んだ平家の怨霊に招かれるまま夜な夜な墓場で平家物語を語らせられていた盲目の琵琶法師・芳一を守るため、世話役の和尚が芳一の全身にお経を書いたところ、うっかり耳にだけ書き忘れてしまい、芳一は耳だけ怨霊に引きちぎられてしまうという物語。平家の亡霊の悲しさと恐ろしさ、お経を全身に書かれた盲僧の異形…。大河ドラマ『鎌倉殿の13人』の公式イラストで話題を呼んだおく氏が、黒と赤を基調に大胆な「和」のモチーフを操って荘厳な恐怖の世界を描き出す。

『夜想絵物語 耳なし芳一』より
『夜想絵物語 耳なし芳一』より

夜想絵物語 雪女』(小泉八雲:著、水溜鳥:画、田部隆次:訳/同)は、武蔵の国のある村の木こりの巳之吉に起こった物語。大吹雪から避難した渡し守の小屋で仲間が美しい雪女に殺されたのを目撃した巳之吉は、「見たことを口外しない」と約束して命拾いするが、のちに妻となったお雪に乞われるまま雪女の話をしてしまう。実はお雪は雪女が姿を変えていたもので、雪女に戻ったお雪は約束を破った巳之吉のもとを去っていく。青を基調に底冷えするような静けさと美しさを描き出すのは、透明感あふれる女性像に定評のある水溜鳥氏。凛とした中に可憐さも秘めた雪女の美しさにハッとさせられることだろう。

『夜想絵物語 雪女』より
『夜想絵物語 雪女』より

 本シリーズは絵本ではなく「絵物語」。言葉の余韻と絵の余韻が響き合い、恐怖と美の物語世界に没入させてくれるのが面白い。さらに「いまどき」がわかっているイラストレーターだけに大胆な画面構成もテンポ良く、古い怪談が新しい感覚で蘇るのも新鮮だ。2月には『夜想絵物語 ろくろ首』(小泉八雲:著、奇烏:画、田部隆次:訳/トゥーヴァージンズ)と『夜想絵物語 幽霊滝の伝説』(小泉八雲:著、さわ:画、田部隆次:訳/同)も刊行予定とのこと。こちらも期待大だ。

文=荒井理恵

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