「私が描きたいものを絶対に否定しない。だから、どんな意見も言えるんです」『家が好きな人』著者、初めての作品集【井田千秋×担当編集インタビュー 後編】

マンガ

公開日:2026/1/25

描きたいものを絶対に否定されない安心感

──ご本人を前にすると言いにくいかもしれませんが、「編集者と私」という連載なのであえてお伺いします。井田さんにとって、鎌倉さんはどんな存在でしょうか。

井田:悪く思うところが本当にひとつもなくて。むしろ、いつも私がご迷惑をおかけしてすみません、という気持ちです。ありがたいのは、私が描きたいものを絶対に否定しないこと。その安心感があるので、意見を言うのがまったく怖くないんです。

「ダメって言われるかな」「いい顔されないかも」という不安が一切ありませんし、仮にそのままでは難しい案だったとしても、一度しっかり受け止めたうえで、より良いアイデアを返してくださるだろうという信頼がある。思いついたことを言えますし、今後もし「こんなことをやったら絶対面白いぞ」というアイデアが生まれたら「鎌倉さーん!」とお声がけしたいです。こうした関係性を築けたことは、すごく心強いですね。

鎌倉:そんなふうに言っていただけて光栄です……。

井田:ただ、私は原稿がめちゃくちゃ遅いので、鎌倉さんが編集部で怒られていないか心配です。

鎌倉:全然そんなことないです! 井田さんは締め切りもきちんと守ってくださいますし、もし多少遅れる場合でも事前に連絡してくださるので、とてもやりやすくて。困ったことなんて一度もありません。

 それに、井田さんは本当にお人柄が素敵で。作品から伝わってくる雰囲気そのままの方だなと、いつも思っています。作家として素晴らしいのはもちろんですし、人間性も魅力的で私としてもすごくありがたい存在です。…………好きです!!

1970~80年代の雑誌や絵本で培われたセンス

──ちなみに、おふたりのお住まいも『家が好きな人』のような雰囲気なのでしょうか。

鎌倉:井田さんは『家が好きな人』と『おさまる家 井田千秋 作品集』の間くらいのタイミングでお引っ越しされましたよね。

井田:そうですね。もちろん絵には理想や憧れが投影されているので、「この絵の通りです」とは言えませんが、やっぱり好みは絵にも反映されていると思います。家具や食器なども自分の好みですから、部屋を眺めてなんとなく自分の絵っぽいなと思う瞬間もありますね。私は木の家具がすごく好きで、絵にも木製家具ばかり描いてしまうんですけど、そういうところは似ているのかなと思います。

鎌倉:一度、ご自宅にお邪魔したことがありましたよね。まだお引っ越ししたての頃で。今ほど家具が揃っていない状態だったと思うんですけど、それでもすごく素敵でした。

井田:いやいや、ふすまの向こうを見せなかったので。仕事部屋は本当にひどいです。物がものすごく多くて。

──家具は、どんなところで購入されているんですか。

井田:本当にいろいろですね。インテリアや生活雑貨のチェーン店も利用しますし、Instagramで古道具屋さんをチェックするのも好きです。今はどのお店もSNSをやっているので、好みのものがよく出てくるお店を見つけて、「この戸棚かわいいな」と思ったら、サイズを問い合わせたりしています。

鎌倉:私もだんだん井田さんの影響を受けて、「おしゃれな家にしたいな」と思うようになってきました。ただ、どうしても生活感が出てしまうし、便利さ重視で家具を揃えると統一感がなくなってしまって。井田さんがお持ちの食器棚、水屋箪笥に似たものを私も持っているので、そこだけはおしゃれゾーンにしようとしています。

──井田さんは、どうやってセンスを磨いてきたのでしょうか。

井田:磨かれているかどうかはわかりませんが、子どもの頃から好きなものの傾向がはっきりしていました。母が持っていた1970~80年代の雑誌や絵本、書籍を眺めて育ってきたので、古いもの、絵本に載っているような細かい柄が好きで。大人になっても変わらず、そういったものにばかり目が行きます。

──鎌倉さんも、こういう雰囲気がお好きなんですね。

鎌倉:大好きです。井田さんが本で家具や雑貨、食器を紹介しているのを見るたびに「本が出たら売り切れちゃうんじゃないかな。先に買っておこうかな」と思ってます(笑)。

井田:大丈夫です、そんな影響力はないので(笑)。

鎌倉:実は、井田さんにまだお話ししていなかった告白がありまして……。『おさまる家 井田千秋 作品集』で、太田木工さんの寄木細工の箱を描いていましたよね。

  『おさまる家 井田千秋 作品集』より
『おさまる家 井田千秋 作品集』より

 井田さんからラフが届いたあと、掲載許可をいただくために太田木工さんにメールをお送りしたんです。ちょうどそれが旅行先の箱根で、帰りに小田原に寄ったら太田木工さんが展示販売をされていて。「あ、昨日メールした方だ」と気づき、あまりにも運命的な出会いだったので井田さんとおそろいの寄木細工の箱を私も購入しました。気持ち悪いかなと思い、今日まで言い出せなかったんですけど……。

井田:気持ち悪くなんてないです。プレゼントする前に教えていただいてよかったです。

──最後に『おさまる家 井田千秋 作品集』の見どころをお願いします。

井田:これまで書いてきた同人誌を、新刊としてようやく形にできました。きれいにまとまり、とても素敵なデザインに仕上げていただいたので、ぜひお手に取って楽しんでいただけたらうれしいです。紙でも電子でも手に取っていただけたら幸せですが、もしよかったら今回はぜひ紙の本を本棚に並べてもらえたらうれしいです。

鎌倉:表紙に箔押しもしていますので、ぜひ紙で手に取っていただきたいですね。

井田:お家であたたかくして読んでもらえたら。

──冷静に考えると、かなりお得な価格ですよね。

鎌倉:お気づきですか(笑)。オールカラーで税込2750円ですから、とてもお買い得です。同人誌の値段をすべて足せばそれ以上になりますから。

──これからも、おふたりで幸せに本を作っていきそうですね。

井田:次の本も、また一緒に。

鎌倉:ぜひ、よろしくお願いします!

取材・文=野本由起

<第9回に続く>

あわせて読みたい