SUPER BEAVER渋谷龍太のエッセイ連載「吹けば飛ぶよな男だが」/第55回「おねしょ」

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公開日:2026/1/27

 ということで完全なる諦めの境地に至ってみたのだが、いざそうなると面白いことに、だんだんとおねしょが上達していった。おねしょの上達が一体何を指すのかわからない人も少しいると思うので、一旦簡潔に説明させていただくと、どこで気が付けるか、である。気が付かないおねしょをしているうちはズブの素人、気が付けるおねしょが出来るようになってくると玄人、ということ。

 つまり起床時に下半身に違和感を覚え、慌てて掛け布団を捲って「おい、嘘だろ」なんてのは、ただのペーペー。放尿が始まって程なくして気がつけるようになって初めて、心得があると言っても恥ずかしくはなくなる。ちなみに私はおそらく最終段階と呼べるところにまで到達していたため、放尿を開始してから即座に察知することが出来るようになった。それはズボンすらも濡らすことなく、被害はパンツ一枚という熟練の境地であったために、他にあまり類を見ない。

 十五から始まった修羅の道、この域に辿り着くまでに要した時間はおおよそ十年。そしておねしょをしなくなってから気が付けば八年以上の歳月が流れていた。時にはクヨクヨしたり、どうせ俺なんてといじけたり、当時付き合っていた女の子とくっついて寝てしまったが故にその子のお尻をびしょびしょにしてしまったこともあった。どれもこれも良い思い出だが、どういうわけかそんな日々が懐かしくなったのでした。

 何が言いたかったのかと言うと、当時の悩みは悩みながらもその形を変えてゆく。そして当時は立ち直れないほどの重大なこととして抱えていた悩みも、時が経って己が変化していくに従って、些末なものとなっていたりして振り返ることができるようになっていたりする。

 悩みの本質自体は何年経っても変わることはないが、経験の上に成長を自覚することが出来るようになった自分は、たかだかそれくらいのことだった、と笑い話として懐かしむことが出来るようになる可能性すらあるということ。

 たった今キャパシティをオーバーするほどの悩みを抱えている人もいるかと思うが、例え真正面から向き合うことが難しかったとしても、潰れることは避けて欲しいなアなんていう風に思う。数年先の自分に期待しても決してバチは当たらんよ。絶対に大丈夫! だなんて無責任なことは言えないが、可能性を信じて邁進する時間は自分の血肉になっていくことは間違いない。

 最後に良い事っぽいこと言ってバランス取ってやろう、と打算的な考えのもと書いてみたが、意外と本質捉えてるっぽい。どの事例にも当てはまることではないのだが、悩みに悩んだら長いことおねしょしてたロン毛が書いていたこの文章を思い出してみて欲しい。

 あるよな色々、大なり小なり。あ、大便ならぬ小便の話なり。

 ごめんなさい、ごめんなさい。

<第56回に続く>

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しぶや・りゅうた=1987年5月27日生まれ。
ロックバンド・SUPER BEAVERのボーカル。2009年6月メジャーデビューするものの、2011年に活動の場をメジャーからインディーズへと移し、年間100本以上のライブを実施。2012年に自主レーベルI×L×P× RECORDSを立ち上げたのち、2013年にmurffin discs内のロックレーベル[NOiD]とタッグを組んでの活動をスタート。2018年4月には初の東京・日本武道館ワンマンライブを開催。結成15周年を迎えた2020年、Sony Music Recordsと約10年ぶりにメジャー再契約。「名前を呼ぶよ」が、人気コミックス原作の映画『東京リベンジャーズ』の主題歌に起用される。現在もライブハウス、ホール、アリーナ、フェスなど年間100本近いライブを行い、2022年10月から12月に自身最大規模となる4都市8公演のアリーナツアーも全公演ソールドアウト、約75,000人を動員した。さらに前作に続き、2023年4月21日公開の映画『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命-』に、新曲「グラデーション」が、6月30日公開の『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -決戦-』の主題歌に新曲「儚くない」が決定。同年7月に、自身最大キャパシティとなる富士急ハイランド・コニファーフォレストにてワンマンライブを2日間開催。9月からは「SUPER BEAVER 都会のラクダ TOUR 2023-2024 ~ 駱駝革命21 ~」をスタートさせ、2024年の同ツアーでは約6年ぶりとなる日本武道館公演を3日間発表し、4都市9公演のアリーナ公演を実施。2025年4月に結成20周年を迎え、SUPER BEAVER 自主企画「現場至上主義 2025」を4月5日、6日にさいたまスーパーアリーナで行い、さらに、6月20日、21日に自身最大規模となるZOZOマリンスタジアムにてライブを行うことが決定。

自身のバンドの軌跡を描いた小説「都会のラクダ」、この連載を書籍化したエッセイ集「吹けば飛ぶよな男だが」が発売中