心霊動画で一攫千金! と思ったら何かに取り憑かれた…。デビュー作映画『とれ!』に込めた思いとは【動画クリエイターコウイチインタビュー】

ダ・ヴィンチ 今月号のコンテンツから

公開日:2026/2/3

※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2026年2月号からの転載です。

 一人コントのショート動画で人気を博す動画クリエイターのコウイチさん。学生時代から映画の世界に憧れを抱いていたという彼が、まもなく公開の『とれ!』で長編映画監督デビューをはたす。

「いつかはという思いをつねに持っていましたが、想像していたよりも早くに声をかけていただいて驚きました(笑)。でも、こういうのって経験しないと力がついていかない。最高の機会だと自分を奮い立たせ、頑張りました」

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 挑んだ作品はホラー。自身が得意とするジャンルのひとつだ。

「以前、『消えない』という短編映画で少し評価をいただいたこともあり、以来、ホラーのイメージもついちゃったみたいです(笑)。ただ、長編映画を撮るからにはただのホラーではなく、主人公がほんのちょっとでも成長していく要素を入れたいと決めていました」

 一攫千金を狙い、心霊動画をバズらせようと目論む高校生の美咲と皐月。ところが、美咲は自分にしか見えない“何か”に取り憑かれてしまう……。

「人が本当の怪奇現象を体験したときにどんな行動を取るのかも作品の軸にしたいと考えていました。だって、きっとなす術がないと思うんです(笑)。ただ、美咲は神様に取り憑かれるのですが、最初こそ驚くものの、近くにいるだけで何もしてこないから、そのうち慣れてきちゃうんですよね(笑)」

 見る人によってユーモラスにも恐怖にも感じられる世界観は今作でも健在。しかし、コウイチさんはさらなる仕掛けを用意した。それは、神様とは別にもう1体現れる、幽霊の存在。

「ホラー映画に登場する恐怖の対象って大抵が1つですよね。その概念を壊して、2つの別々の霊的な存在を同時に動かしていったら面白いんじゃないかと思ったんです。怨念を持った幽霊と何もしてこない神様。しかも、その神様が突然恐ろしい力を見せてきたら物語が広がっていくだろうなって」

 しかし、この“物語の広がり”こそが、コウイチさんが長編を撮るにあたって感じた大きな挑戦だった。

「短編は奇抜なアイデアが1つあればそれで乗り切れるんです。でも、長編だとそうはいかない。ですから、『とれ!』では王道の物語を描きつつ、後半から大きく変化するようにしました。そこにはホラー要素だけでなく、美咲と皐月のそれぞれの親との関係性や、二人の友情なども詰め込んでいます」

 その美咲役には中島瑠菜さん。親友の皐月役はインフルエンサーとして活躍するまいきちさんを抜擢した。

「中島さんは一目見た瞬間から主人公属性といいますか、映画の中心にいる俳優という輝きを感じました。反対に、皐月役は当初想定していた人物像とは真逆のまいきちさんをオーディションで選びました。そんな二人が劇中で動画のバズりに一喜一憂する。そこはすごくリアルに描けたなと思っています」

 映画を完成させた今、早くも「次はもっと怖いホラーを撮ってみたいです」と新たな目標を。さらには、「需要がある限り、どんな仕事も引き受けたいんです」という貪欲さも。

「楽しそうな仕事なら、たとえためらいがあったとしても飛び込んでみたい。だって昔は、まさか僕が『ダ・ヴィンチ』で小説を連載するなんて思いもしなかったですし。せっかくの人生、ワクワクすることにどんどん挑戦していきたいですね」

取材・文:倉田モトキ 写真:島津美紗

こういち●1996年、北海道生まれ。高校1年生のときにYouTubeチャンネル「kouichitv」で動画投稿を開始。2018年には短編作品『最悪な1日』が札幌国際短編映画祭で特別賞を受賞。著書に小説『計画書』、フェイクエッセイ『最悪な一日』(共にKADOKAWA)などがある。

コウイチさんの作品

とれ!
2026年1月16日(金)全国公開
監督・脚本:コウイチ 
出演:中島瑠菜、まいきち、和田雅成、宮地真緒、奥菜 恵 
配給:KADOKAWA
ある日、高校3年生の美咲が撮ったVLOGに霊のようなものが偶然写り、投稿動画は大バズり。広告収益の大きさに魅了され、親友の皐月と共に続けざまに心霊のフェイク動画を投稿していたが、とうとう“本物”が映りこんでしまい、さらに美咲は“神様”に取り憑かれることに――。

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