子どもが真夜中ひとりでトイレに行けるようになる!? 絵本『まよなかのおしっこ』がこわいのにおもしろい!【冒頭試し読みアリ】
公開日:2022/7/6

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50音順にさまざまな食べ物が登場する『あっちゃんあがつく たべものあいうえお』など、子どもの気持ちに寄り添った絵本で知られる絵本作家のさいとうしのぶさんが、新作絵本『まよなかのおしっこ』(KADOKAWA)を上梓しました。
カバーに描かれたおばけの絵は、なんだかこわそう…。でも気になる。読んでみたい!
子どもが真夜中にパチッと目を覚ました瞬間、頭をよぎるのは「おしっこ!」。いつもはスイスイと行けるトイレまでの道のりが、真夜中だけは長〜い冒険になります。

真夜中の2時にトイレに行きたくなって目を覚ます主人公の男の子。おしっこで目が覚めるのは大抵、魑魅魍魎がうろつくような真夜中ですよね…。

この主人公が偉いのは、「今日からひとりで寝ます」と大人に伝えていたこと。「やってみたい」という子どもの気持ち、受け止めてあげたいですね。かわいい子には旅をさせるつもりで!

自分の部屋がある2階から、トイレのある1階に降りるまでには、部屋の戸をあけて、廊下の電気をつけて…と、いくつもの難関を突破しなければ!
けれど主人公の頭の中には、戸をあけたらミイラ男がぶらさがっているかも…スイッチを押そうとしたらニュ〜ッと手がたくさん出てきて僕の手を掴むかも…と、こわ〜い想像が広がるばかり。
夜中はどうしてこわいの? おばけが出るから? もしこわくないおばけだったら? そんな気持ちにさせられる意外なラストに親子で驚き。筆者の5歳息子は「こんなおばけ、いるんだ…」と半信半疑になりながらもホッとした顔をしていました。
想像力が豊かだからこそおばけがこわい子どもたちは、「おばけはこわくない」と発想を転換させることもできるのだなと納得。それもまた、想像の楽しさだと感じます。
主人公がトイレに行けるまでの成長と冒険を見届けよう
著者のさいとうさんは全国で積極的に講演を行い、保育士さんや司書さんたちから絶大な信頼を寄せられている絵本作家さん。全体的に夜のトーンで描かれた本書には、おばけもちゃんと登場しますが、子どもに恐怖心を与えないため、ユーモアたっぷりに描かれているのだとか。
たしかに、著者のユーモアが随所に感じられます。愛嬌たっぷりのおばけたち、ププッと笑えるギャグの応酬。それに、「おばけの でる じかんやん!」「いてへん、おばけなんか ありえへん」「なんでやねん!」と関西弁で繰り返される自問自答は、ひとり漫才みたい(著者のさいとうさんは大阪出身なのです)。
おばけを想像した時のびっくり顔や、「ありえへん、だいじょうぶや」と自分に言い聞かせる時の下がり眉など、子どもらしい表情も本当に可愛らしい!
こんな冒険なら、夜中だってきっとこわくない。主人公の成長を見届けたなら、この本を読んだ子どもたちも、ひとりで夜中のトイレに行けるようになるかもしれません。
また、絵本の中には小さなおばけちゃんのイラストが隠されていて、一つひとつ見つけて遊べる楽しさもあります。
自分も子どもの頃、わざと音を立てたり、ひとりごとを言ったりしながら夜中のトイレに行ったなあ…。わが子にもいつか、そんな日が訪れるのですね。勇気を奮い立たせて夜中のトイレに向かうわが子の姿を想像すると、楽しみになりました。
文=吉田あき
本書の冒頭を試し読み




■書誌情報
書籍情報:『まよなかのおしっこ』KADOKAWA
https://yomeruba.com/product/ehon/322108000195.html
■『まよなかのおしっこ』絵本原画展
期間:2022年9月9日(金)~9月27日(火)
場所:ムッチーズカフェ(西荻窪)
https://mucchis-cafe.jimdofree.com/
※新型コロナウィルス感染拡大により、変更・中止になる場合があります。