Webで9000万PV超の人気作の書籍化! 魔法学院に入学した傭兵の息子の成長物語『アルマーク』
公開日:2022/9/17

傭兵の息子アルマークが魔法学院へと入学し、同級生たちと成長していく王道ファンタジー『アルマーク』シリーズ(やまだのぼる:著、出水ぽすか:イラスト/MFブックス/KADOKAWA)が8月25日に1・2巻同時発売された。戦乱の絶えない国で生まれ育った少年アルマークが、平和な魔法学院へやってきて文化の違いや人の優しさに触れて自分の世界を広げていく姿が心情豊かに描かれている。Webで連載され9000万PV超の異例の人気を得た話題作の単行本化だ。
大陸の南の国々に平和な時代が訪れて早百余年。しかし北方では戦火が絶えず国同士が争いに明け暮れていた。荒くれ者の北の傭兵の中でも名の通った傭兵団「黒狼騎兵団」の副団長レイズの息子として生まれたアルマークは、旅の途中だった魔法学院の学院長ヨーログに魔法の才を見出されるが、父親譲りの剣の才も引き継ぎ、9才の若さで一人前の戦士として成長する。しかし息子を傭兵にしたくない父の言葉に従い、アルマークはノルク魔法学院がある南方の王国を目指して旅に出る。
平和な南の国では戦争を生業とする北の傭兵は野蛮人として忌み嫌われていた。学院長ヨーログの提案でしぶしぶながら出自を隠して入学したアルマークだが、旅に2年かかったことで同級生より出遅れ、周囲が当然のようにできる初級の魔法どころか、魔力さえ練れずにつまずいてしまう。北とはすべてが異なる文化や暮らしに戸惑うアルマークだが、心優しい少女ウェンディや、食いしん坊のモーゲン、やんちゃ坊主のネルソンなど、個性的な友人に恵まれてクラスに馴染んでいく学園生活が微笑ましくなる。
しかし、それぞれ育った環境や価値観も異なる少年少女がひとつの教室にいれば意見の違いで衝突もする。魔法の才能さえあれば国や身分にかかわらず平等に教育が受けられるノルク魔法学院だが、それでも貴族と平民の溝は深い。貴族であることに誇りを持つ少年トルクは、普段から平民を見下していた。貴族でありながら誰ともわけへだてなく交流するウェンディは、クラスの貴族と平民の関係に溝があることを思い悩んでいた。
ウェンディに恩を感じていたアルマークは一計を案じ、隠していた北の傭兵としての力をほんの少し見せることでトルクに平民であっても決して貴族に劣らないと証明する。その後も学院で起こる騒動を通じて、確かな実力を持つアルマークにトルクは一目置くようになり、一方アルマークも魔法を自在に使いこなす同級生たちに敬意を持ちながら、お互いに切磋琢磨する関係になっていく。
いがみ合っていた者同士が力を合わせて困難に立ち向かい、お互いの存在を認め合う少年漫画のような展開が胸をふるわせる。北の傭兵の息子であるという秘密を抱えながら級友と友情を育んでいくアルマークと、彼を取り巻く周囲の人々の変化や成長が見どころだ。
同時発売となる2巻では、夏休みを迎え、アルマークはウェンディの招待で屋敷へと遊びにいく予定を立てる。しかし、何者かの陰謀に彼女が巻き込まれて、自分と同じ北の傭兵が彼女の暗殺を企んでいることを知ってしまう。果たしてアルマークはウェンディを救えるのか、という緊迫した物語が展開する。まだ友情とも恋心とも自覚のないアルマークとウェンディの想いが初々しくて見守りたくなる。
そしてまだ魔法が使えないアルマークは、この先に闇を巡る戦いの宿命が待ち受けていることを知らない。ファンタジーの王道をいく魔法の学園物語『アルマーク』。学園ストーリーやファンタジーが好きな方はぜひ手にとってみてはいかがだろうか。
文=愛咲優詩