自信が持てなくなった大人にも刺さる!カラフルな色彩で描くアライグマの“自分探しの物語”

文芸・カルチャー

公開日:2023/3/24

ぼくのへや
ぼくのへや』(伊藤ハムスター/KADOKAWA)

 誰しも各々の魅力や価値があると言われても、なかなかそうは思えないのが人間だ。他人と比較しては自分のふがいなさに落ち込んだり、人のものが羨ましくなったりと、ありのままの自分を好きになることは難しい。

 だが、『ぼくのへや』(伊藤ハムスター/KADOKAWA)に出会うと、自分の受け止め方が変わるかもしれない。

 本作は、イラストレーター・伊藤ハムスターさんが手掛けた初の絵本。伊藤さんは、独特なセンスやユーモアが詰め込まれたカラフルな画風で多くの人を魅了している注目の人物だ。絵本作家のヨシタケシンスケさんも、推薦コメントを寄せている。

私には、あらいぐまの気持ちが、いたいほどわかる。あなたも一緒に、いたがりませんか?――ヨシタケシンスケ

 物語の主人公は、好きなものを無理やり手放し、周囲から思われるイメージ通りのアライグマに変わろうとする「ぼく」。そんな「ぼく」が、自分らしく生きることの尊さに気づくというストーリー展開がグっとくるのだ。

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手放した物を取り戻したい…1匹のアライグマが「自分探し」の旅に出発!

 主人公のアライグマ、「ぼく」はある日、友人のアライグマの家が綺麗なことに衝撃を受けた。アライグマといえば、綺麗好きなイメージが強いが、「ぼく」は違う。部屋には物が溢れており、それが心地いいと思っていたのだ。

ぼくのへや P6〜7

 自分は周囲が思うアライグマのイメージと、かけ離れている…。そう気づいた「ぼく」はショックを受け、アライグマ失格だと落ち込む。「ぼく」はどうにかして、よりよいアライグマになるべく、思い切って自宅にあったものを友人たちに譲った。

 すると、部屋は見違えるほど、スッキリ。しかし、「ぼく」はなんとなく居心地の悪さを覚え、手放したものが恋しくなってきた。そこで、あげたものを友人たちから返してもらうべく、市場や深海、宇宙など様々な場所へ繰り出す。

 この“大切なもの探しの旅”を通して、「ぼく」は自分らしくあることの大切さを痛感。そして、「ぼく」の成長に触れ、読者は自分の生き方を振り返りたくなる。

 結婚、出産、離婚など人生は選択の連続であるからこそ、年を重ねるごとに隣の芝生が青く見えることが増えて、自分の在り方や生き方にどんどん自信が持てなくなってくる。そんな苦しい胸のうちを受け止め、誰しもかけがえのないひとりなのだと諭してくれる優しさが本作にはあるのだ。

 1匹のアライグマが伝える「みんなと違う自分でもいい」「本当に好きなものを大切にすればいい」というメッセージが、ひとりでも多くの“自分を嫌いになってしまった大人”に届いてほしい。

 なお、本作は子どもももちろん楽しめる絵本である。アライグマが旅する摩訶不思議な世界は色彩豊かで見ているだけでもワクワク。さらに、絵探しが楽しめるような仕掛けも。

ぼくのへや P22〜23

 我が子とコミュニケーションを取りながら、アライグマの“宝物探し”に協力してみるのもよさそうだ。大人も子どもも笑顔になれる、アライグマの“自分を見つける物語”。ぜひ、親子でページを開いてみてほしい。

文=古川諭香