「はっけろ けろ~い」かえると相撲を組み合わせたユニークな絵本に夢中! 子どもの興味を広げる仕掛けがいっぱい

文芸・カルチャー

公開日:2023/5/24

けろずもう
けろずもう』(つるたあき/KADOKAWA)

 丸っこい体に、飛び出た目。そんなキモカワいいビジュアルを持つカエルのことが、子どもはなぜか好きですよね。『けろずもう』(KADOKAWA)は、“かえる愛”がつのってかえる絵本ばかりを描いている作家つるたあきさんによる新作絵本。題材は、かえる×相撲。この意外な組み合わせ、どんな展開になるのでしょうか。

けろずもう

 ある夏の夜、たくさんのかえるたちが鳴いています。そんな中、かえる2匹の鳴き声が重なってしまいました。その瞬間、“けろずもう”が始まります。かけ声は、かえるらしく「はっけろ けろ~い」。土俵に立つのは、アマゾンツノガエルの「つののやま」とチャコガエルの「あおのふじ」です。果たして、気になる勝敗は……?

けろずもう

 つののやまが自慢のツノでぐいぐい押したと思ったら、あおのふじが膨らんだお腹で相手を飛ばす“ふくらみとばし”で対抗! ド迫力の戦いが展開され、まわりにいるかえるたちの応援にも力が入ります。

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 かえるが相撲!? と意外に思っていましたが、おなかが丸くて足の細いかえるには、力士並みにフンドシがお似合い。押し合い、飛ばし合いをする姿も、なんだかサマになっています。

 この絵本、じつは、作者が観たとある映像がもとになっているとか。その映像では、ゲーコゲーコと鳴いていた2匹の鳴き声が次第に重なっていき、合唱するのかな…と思った次の瞬間、突然、取っ組み合いの大げんかを始めたそう。

 本書で相撲をとるかえるの動きがとてもリアルだと感じていましたが、実際の動きがヒントになっていると知って納得。たしかに、かえるが相撲をとったら、こんな技を繰り出すかも…!

けろずもう

 動きはもとより、かえるたちの模様や表情のリアルさも、著者が描く絵本の持ち味。筆者も6歳の息子と一緒に「みんな形が違うね」「こんな鳴き声あるんだね」などと話しながら読んでいましたが、息子はどうやら1匹のかえるが気になっている様子。

 本書によると、その「ミャー!!」と鳴く茶色いかえるは「アメフクラガエル」という種類らしい。さっそくネットで検索すると、本に描かれている通り、小さな口を持つかえるだと発覚。「こんなにかわいいかえる、本当にいる?」と最初は疑っていた息子も納得したようで、「へえ~、本物も絵もかわいい~」とハマってしまったみたい。子どもの興味の幅が広がると、親もうれしくなりますね。

 発売前に一足お先に読み聞かせを行った保育士さんたちからは、「『はっけろ けろ~い』という掛け声を子どもたちが一緒に言っています」「大好きなかえるとすもうなので、タイトルだけで『おすもうだ!』と興味津々でした」などの声が届いているとか。筆者も、子どもはなぜかかえると相撲が好きだと感じていたので、この2つがあわさった絵本はまさに最強だな、と感じました。

 かえるの種類や生態を知りながら楽しめる本書。物語の後半には意外な展開があり、かえるがかっこよく見えたり、仲間で力をあわせる姿に共感したりと、ここでも子どもの心が動かされるはず。かえるの豊かな表情や色柄を眺めるだけでも楽しく、他にも、ダイナミックな動き、読み聞かせにも力が入る掛け声やかえるの声など、読み進まずにはいられない魅力がたくさんあります。

 梅雨から夏にかけては、まさにかえるが一生懸命鳴き始める季節。その声を聴くたびに、どんな相撲をとっているんだろう、と想像する楽しみが増えそうです。

文=吉田あき

◆書誌情報『けろずもう』(KADOKAWA)
https://yomeruba.com/product/ehon/322301000585.html