読むだけで“読み聞かせ上手”になれる絵本。「どんどんぱっ」の掛け声で、子どもがどんどん夢中になっていく!
公開日:2023/6/28

『いろいろどうぶつかくれんぼ』(ポプラ社)、『おめんです』(偕成社)など、絵本好きなら一度は聞いたことがある、“あてっこ遊び”の本。ユニークな発想と豊かな色彩のイラストで子どもたちを魅了し続けている作家、いしかわこうじさんによる絵本です。
そんないしかわさんの新作『どんどんぱっ』(KADOKAWA)は、たぬきが様々な姿に変身して子どもたちをおどろかす、あてっこ遊び×キャラクター絵本。鮮やかな色彩、豊かな表情、恐竜やバスなどのモチーフ、探し絵あそびなど、子どもが喜ぶ仕かけがたくさん。読み聞かせが楽しくなりそうな1冊です。
何に変身する? 参加しながら読み聞かせ

「にんきものになりたい たぬきさん。なにに へんしんする?」という問いかけから始まるページ。さあ、ここが最初の“参加”ポイントです。「おなかを たたいて どん どん」と声をかけながら、しばしのシンキングタイム! たぬきは何に変身するのかな? すこし大きめのお子さんなら、「にんきものになりたい」という言葉から連想できるモノやコトを、答えてくれるかもしれません。
見事な変身で子どもがおどろく展開

次は、答え合わせができるページです。「ぱっ ぱんださん! きゃーかわいい!!」。背景の色や、座っている格好はさっきと同じですが、「たぬき」は「ぱんだ」というまったく異なる姿に、劇的な変身を遂げました! しっぽだけ上手に変身できていないのは、ご愛嬌。
つまり、たぬきがドロン! とパンダに化けるわけですが、「どんどんぱっ」の言葉とともにパッと姿を変える様子は、まるで魔法を見ているよう。「あれ? なんか変わった?」と子どもは内心おどろいているはずなので、びっくりした表情をこっそり覗いちゃいましょう。
「どんどんぱっ」で親も元気になれる

さあ、たぬきの変身技は、動物だけにとどまりません。今度は「かくれんぼをしたい」たぬきさん、何に変身するのでしょうか。「さあ おなかをたたいて どん どん」。
家事や育児、仕事でつかれた日は「は~今日もつかれた~」と思いながら、読み聞かせをすることも多いですよね。でも、ここははりきって、自分や子どものおなかをたたきながら「どん どん」をしてみましょう。そこで子どもが笑顔になったら、きっと元気になれます。
読むだけで読み聞かせ上手に!

「どん どん ぱっ」で変身したのは…葉っぱでした! 「はらり はらり」という擬音も書かれています。パンダになったときの「きゃーかわいい!!」もそうですが、変身を見たときの率直な感想や、その様子から想像できそうな擬音が書かれているのも、この本のよさだと感じます。人はその現象を目にしたとき、どんな言葉を思い浮かべるのか。それを子どもは、こういう絵本でも学んでいくのだろうと実感しました。
本書ではこの「どん どん ぱっ」が何度も繰り返されるのですが、その言葉に子どもも大人も次は何かなと夢中になっていきます。読みすすめるたびに、親子ともにどんどん楽しくなれる仕かけがいっぱいあります。だから、読み手の親は、ただ読むだけで読み聞かせ上手になり、子どもとのコミュニケーションを楽しめそうです。子どもの気分が上がる絵本なので、子どもが元気な昼間にも楽しみたいと感じました。雨の日の遊びにも活用できそう。
たぬきは動物園でも子どもに人気ですよね。この絵本に登場するたぬきさんも、繰り返し喜ばせてくれるので、読めば読むほど子どもは親しみを感じてくれることでしょう。
そんなたぬきさん、最後の最後で失敗をして、ほかの動物たちをおどろかせます。しかし、たぬきならではの方法で、またもや、みんなを喜ばせるのです。「たぬきさんも失敗するんだ。失敗しても大丈夫なんだ」というメッセージを受け取るお子さんもいるかもしれません。
文=吉田あき
◆書誌情報『どんどんぱっ』(KADOKAWA)
https://yomeruba.com/product/ehon/322207000232.html