「本当に、ごめん」葬儀場の片隅で涙をこらえる兄弟。妹に何度も許しを乞うが、返事はなく…【葬式】/意味がわかると鳥肌が立つ話⑦
公開日:2023/8/25
『意味がわかると鳥肌が立つ話』(蔵間サキ:編著、toai:絵/Gakken)第7回【全13回】
累計460万部を突破した「5分後に意外な結末」の公式ライバルシリーズ「5分後の隣のシリーズ」より、『意味がわかると鳥肌が立つ話』をお届け。一見何気ない物語のようだけど、意味がわかると、その意外な展開に思わずゾワっと鳥肌が…。怖いだけではなく、感動や笑いなど、さまざまなタイプのショートストーリーを収録。読み進めるうちにどんどんはまっていく……「鳥肌」エピソードをお楽しみください。
【怖い場面あり、苦手な人は閲覧注意!】

葬式
葬儀場の片隅に、うつむいて涙をこらえる兄弟がいた。
2人とも、顔や腕に大きな怪我を負っている。
数日前、熱を出した妹を車で病院へ連れて行く途中、事故を起こしてしまったのだ。
兄はふと顔を上げると、はっとした様子で、まだ顔を伏せている弟の肩を何度も叩いた。
「なんだよ、こんなときに……」
「お、お前、アレ、見えるか?」
弟が、兄の指す方向を見る。そこには、うらめしそうな表情で焦点の合わない視線を空に向ける妹の姿があった。
弟は、兄と同じように肩を強張らせた。
「なんでアイツ……だって、あの事故で……」
「恨んでるんだ……。俺たちのことを許さないつもりかもしれない……」
2人は、その場から動けなくなった。
「……謝ろう」
2人が同時につぶやいた。そして顔を合わせてうなずき合い、妹のほうへと近づいていった。
「本当に、ごめん……」
「事故を起こした俺たちを、許してくれ……」
それぞれ謝ると、同時に頭を下げた。
「……」
しかし妹は、2人の言葉にぴくりともしない。兄弟はますますおびえた様子で、こちらを見ようともしない妹に何度も許しを乞うた。
しかし、2人の言葉は届かない。
すると、妹の目から、大粒の涙が流れた。
彼女が見つめる先には、棺桶が2つ並んでいた。