パンどろぼうが泥棒から足を洗ってパン職人に。「おいしいパンを食べてもらいたい」というパン愛溢れる物語が魅力

文芸・カルチャー

更新日:2023/12/12

パンどろぼうとほっかほっカー
パンどろぼうとほっかほっカー』(柴田ケイコ/KADOKAWA)

 食パンを被ったどろぼうが主人公の、人気絵本「パンどろぼう」シリーズ。第5作となる『パンどろぼうとほっかほっカー』(柴田ケイコ/KADOKAWA)が発売中です。

 第1作『パンどろぼう』で、パン専門のどろぼうからパン職人に華麗にジョブチェンジしたパンどろぼう。彼のお店「せかいいちおいしい もりのパンや」は相変わらずの大賑わい。忙しくパンを並べるパンどろぼうのところへ、やぎのおばあさんがやってきてとあるお願いをします。それは、山の向こうに住む孫のところへ焼きたてのメロンパンを届けてほしいということ。

パンどろぼうとほっかほっカー

「おやすいごようさ」とこころよく引き受けたパンどろぼう。しかしおばあさんの孫の住んでいる家はかなり遠く、パンどろぼうはヘロヘロ、メロンパンはパサパサに。

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パンどろぼうとほっかほっカー

 水たまりの前で疲れ果てて膝をつくパンどろぼう。そこへ一台の車が通りすぎ――。

 そう、シーズン第5作に登場するのは、子どもたちに大人気の“車”。パンどろぼう専用車が登場することは表紙を見ればおわかりかと思いますが、その専用車「ほっかほっカー」を作る工程のお話なのです。もちろん車を作る知識のないパンどろぼう。彼がどうやって車を作るのか? そして完成した「ほっかほっカー」はどんな車なのでしょうか?

 これまでもイラストの役割が大きいのが本シリーズの特徴です。例えばこれまではお店に並ぶたくさんの種類のパンをひとつひとつ見るのも楽しみでしたが、今回はパンだけでなく子どもが大喜びすること間違いなしの車たちも登場。「ワニワニブルドーザー」「すしいっちょうあがりカー」など、アイディア満載の車たちに「この車の中はどうなってるのかな?」と、我が家では親子の会話も大盛り上がりでした。

パンどろぼうとほっかほっカー

 そしてパンどろぼうシリーズのイラストといえば、毎回印象的な見開きページがあるのも特色ですが、今回もインパクト大な見開きが。

パンどろぼうとほっかほっカー

 我が家の7歳と4歳はこのページが来るたびに二回目も三回目も四回目も…飽きることなく毎回転げまわって笑っています。

 前作『おにぎりぼうやのたびだち』でその生い立ちも明かされたパンどろぼう。シリーズ5作すべてを貫くのは、彼の「パンへの愛」です。その愛も、どろぼうだった頃は「おいしいパンが食べたい」という自己中心的な気持ちでしたが、パン職人になってからは「おいしいパンを食べてもらいたい」と誰かのためにその愛情を発揮するように。「誰かのために頑張ることってこんなにワクワクすることなんだ」、「誰かの笑顔が見られた時には、こんなにうれしい気持ちになるんだ」。シリーズ5作目は、そんなメッセージを子どもたちに伝える一冊でもあります。

文=原智香