第1回「薩摩ポッター」/酒飲み独身女劇場 ハッピーエンドはまだ来ない①

文芸・カルチャー

公開日:2024/1/12

 ハリー・ポッターみたいな丸い眼鏡をかけ、似たような髪型をした店員さんに出会ってしまったのだ。ハーフなのか顔の彫りも深く、心なしか顔もポッターに似ていた。前髪をぺろんとめくったらおでこに稲妻みたいな傷跡が絶対あるに違いない。

 あまりにもハリー・ポッターに似ていたので、ほろ酔っていた私は「明日できたばかりのハリー・ポッターツアー見学してくるんですよ」と秘密を漏らしてしまった。

 「いいですね、ハリー・ポッター。あの魔法好きです火が出てくる、そうだメラゾーマ」と気さくに話してくれたポッター。

 心を許してついおすすめのお酒を聞いてしまった。

 「泡盛もいいんですけど、この薩摩焼酎がよくて…!」と勧められた芋焼酎。おすすめを聞いて、やっぱりいいですなんて言えるか? 魔法の力で消されるかもしれないぞ。

 それでも断れない性格なのが私。芋だけは絶対に関わってはいけないよと肝臓に言いつけられていたのにも関わらず飲んでしまっておしまい。仲間も一人、また一人と姿を消していった。ここは禁じられた森か?

 気持ち悪いを通り越し、胃が激痛。頑張ってくれ、太田胃散。胃袋の中でヴォルデモートによる胃酸とハリーによる太田胃散の壮絶な終盤間近の戦いが繰り広げられている。昨日の店員さんはハリー・ポッターではなく薩摩ポッターだったのかもしれない。

 

さかむら・ゆっけ、●酒を愛し、酒に愛される孤独な女。新卒半年で仕事を辞め、そのままネオ無職を全う中。引っ込み思案で、人見知りを極めているけれど酒がそばにいてくれるから大丈夫。たくさんの酒彼氏に囲まれて生きている。食べること、映画や本、そして美味しいお酒に溺れる毎日。そんな酒との生活を文章に綴り、YouTubeにて酒テロ動画を発信している。気付けば、画面越しのたくさんの乾杯仲間たちに囲まれていた。