第2回「タイタニック二郎」/酒飲み独身女劇場 ハッピーエンドはまだ来ない②

文芸・カルチャー

公開日:2024/1/26

 続けて、また懲りずにビールが登場するわけですが二つ目は二郎系ラーメン屋さんでの出来事。

 その日はとにかく何もしていなかったけどお腹が空いていてぺこぺこだった。極限の空腹状態の時って、無限になんでも食べられてしまうという錯覚に陥ってしまう。寝巻きのまま何も考えずに家を出たから、自分が古着屋で買ったディカプリオが堂々とプリントされたTシャツを着ていることを忘れていたのだった。流石に恥ずかしくて、カウンター式じゃないファミレスとかはきついなぁ…と思い二郎系ラーメン屋に入店。

 そこで私は過ちを犯してしまったのだった。

 まず、ビールと餃子を注文。ダンス終わりにぐびぐびっとジャックとローズが飲み干したあの黒ビールは置いていなかったので、みんながよく知る黄金色のビール。そして到着した餃子。エクレアみたいな大きさの餃子が皿に4個ずっしりと構えていた。宇都宮、またの名を餃子王国出身の私でも見たことがない大きさだ。もう面構えが違う。がぶっとかぶりつくと、「小籠包?」と疑う量の肉汁がぶっしゃぁ広がった。

 車の中に隠れたジャックとローズふたりの熱気で車の窓ガラスが曇った時のようにめがねが曇る。あまりに熱すぎて己を見失う前にビールでぐいっと流し込むを繰り返すこと4回。餃子の名残りでまだ口内はアツアツなのに私は震えていた。

 「ビール飲みたいなぁ〜。あっ! 餃子も頼んじゃお♪」
 そんな軽い気持ちで注文してしまったが、その後のラーメンのことを何も考えていなかったのだ。しかも、ニンニクアブラヤサイマシマシという『タイタニック』のエンドロールに並んでいてもおかしくない横文字の呪文を唱えてしまったなんて口が裂けても言えない。当初まだ覚えたての呪文だったので調子に乗ってかっこつけようとしてしまったのかもしれない。

 餃子を食べる前までの胃袋は無限だったけど、もう有限になっていた。

さかむら・ゆっけ、●酒を愛し、酒に愛される孤独な女。新卒半年で仕事を辞め、そのままネオ無職を全う中。引っ込み思案で、人見知りを極めているけれど酒がそばにいてくれるから大丈夫。たくさんの酒彼氏に囲まれて生きている。食べること、映画や本、そして美味しいお酒に溺れる毎日。そんな酒との生活を文章に綴り、YouTubeにて酒テロ動画を発信している。気付けば、画面越しのたくさんの乾杯仲間たちに囲まれていた。